第38話

記憶
428
2022/12/25 04:58
ここは…?




『っ……』




白い天井が目の前に広がっていた。

どうやら私は寝ていたみたいだった。




「あなた!」

「あなた、大丈夫か?」

「おかん!あなたが目ぇ覚ましたで!」

「分かった分かった。ここ病院なんやから、静かにしな」

「あなた、分かるか?」

『あの…』

「ん?」

「頭痛いとかないか?」

『ない…』

「そうか。」

『あの…』

「ん?」





『………どちら様、ですか?』




「「…え?」」

「あなた…?」

『あなたって…誰ですか…?』

「何言うとんのやあなた…俺やで?お兄ちゃん!」

「ツム…!」

「ツム兄っていつも呼んどるやん!」

「落ち着けツム!」

「なんでや!あなた!」

「侑!」

「っ…」

「…2人とも。先生呼んできて」

「お、おん!」

「行ってくる!」



誰なんだろう…

2人顔が同じな男の人と、そのお母さんかな…

私は…




「宮さん。」

「あ、先生。目覚ましましたよ」

「はい。あなたさん、分かりますか?」

『…はい…』

「ご自分の名前、分かりますか?」

『…分かりません』

「この女性は?」




先生は2人のお母さんらしき人を差した。




『分かりません』

「…では、この2人は?」

「「っ…」」

『…分かりません』




そもそも、何で私はここにいるの…




「……記憶喪失になっています。恐らく、事故の衝撃でしょう。検査をします」

「はい…」




「あなた…」

「っ…」

『?…』

「…ツム、まずは一から話したろ」

「……そうやな」

「…俺は治。宮治や。」

「俺は侑。」

『治と侑…』

「お前の名前はあなた。俺らの妹や」

『妹…』

「あなた、お前はな。事故にあったんや」

『事故…?』

「おん。事故にあって、頭ぶつけて…記憶喪失になっとるらしい」

「あなたの記憶が、頭の中から全部消えてしまっとるんや」

『っ…』

「大丈夫やで。俺らがおる」

「そうやで。安心しぃ」




優しい人達。

本当に私のお兄ちゃん達なのかな…





「あなたさん。これから検査をします」

『は、はい…』

「不安になることはありません。安心してくださいね」




病院の人も優しい人。

人ってこんなに優しいんだ。

そんなことも、忘れちゃったのかな。











「…やっぱり、記憶喪失ですね」

「あなた…」

「しばらく様子を見ましょう。ご家族はあなたさんと一緒に居てあげてください。」

「わかりました」

「何か思い出すことがあると思います。ご家族と一緒の方が、何か思い出すでしょう」

「本当にあなたが記憶を取り戻すのが、俺らなんですか?」

「はい。その可能性は高いです」

「「あなた…」」





俺らが、絶対にあなたを守るんや。





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