ここは…?
『っ……』
白い天井が目の前に広がっていた。
どうやら私は寝ていたみたいだった。
「あなた!」
「あなた、大丈夫か?」
「おかん!あなたが目ぇ覚ましたで!」
「分かった分かった。ここ病院なんやから、静かにしな」
「あなた、分かるか?」
『あの…』
「ん?」
「頭痛いとかないか?」
『ない…』
「そうか。」
『あの…』
「ん?」
『………どちら様、ですか?』
「「…え?」」
「あなた…?」
『あなたって…誰ですか…?』
「何言うとんのやあなた…俺やで?お兄ちゃん!」
「ツム…!」
「ツム兄っていつも呼んどるやん!」
「落ち着けツム!」
「なんでや!あなた!」
「侑!」
「っ…」
「…2人とも。先生呼んできて」
「お、おん!」
「行ってくる!」
誰なんだろう…
2人顔が同じな男の人と、そのお母さんかな…
私は…
「宮さん。」
「あ、先生。目覚ましましたよ」
「はい。あなたさん、分かりますか?」
『…はい…』
「ご自分の名前、分かりますか?」
『…分かりません』
「この女性は?」
先生は2人のお母さんらしき人を差した。
『分かりません』
「…では、この2人は?」
「「っ…」」
『…分かりません』
そもそも、何で私はここにいるの…
「……記憶喪失になっています。恐らく、事故の衝撃でしょう。検査をします」
「はい…」
「あなた…」
「っ…」
『?…』
「…ツム、まずは一から話したろ」
「……そうやな」
「…俺は治。宮治や。」
「俺は侑。」
『治と侑…』
「お前の名前はあなた。俺らの妹や」
『妹…』
「あなた、お前はな。事故にあったんや」
『事故…?』
「おん。事故にあって、頭ぶつけて…記憶喪失になっとるらしい」
「あなたの記憶が、頭の中から全部消えてしまっとるんや」
『っ…』
「大丈夫やで。俺らがおる」
「そうやで。安心しぃ」
優しい人達。
本当に私のお兄ちゃん達なのかな…
「あなたさん。これから検査をします」
『は、はい…』
「不安になることはありません。安心してくださいね」
病院の人も優しい人。
人ってこんなに優しいんだ。
そんなことも、忘れちゃったのかな。
・
・
・
「…やっぱり、記憶喪失ですね」
「あなた…」
「しばらく様子を見ましょう。ご家族はあなたさんと一緒に居てあげてください。」
「わかりました」
「何か思い出すことがあると思います。ご家族と一緒の方が、何か思い出すでしょう」
「本当にあなたが記憶を取り戻すのが、俺らなんですか?」
「はい。その可能性は高いです」
「「あなた…」」
俺らが、絶対にあなたを守るんや。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。