第12話

意味
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2020/06/07 11:19
「ほら,俺らがあなたをバレー部のマネージャーやってくれって駄々こねた時」

「あぁ…」

 








半年以上前




俺が3年で稲荷崎のキャプテンになった頃,このチームにはバカが2人いた。

宮侑と宮治という双子や。

今日もどうせ俺の見てないところで喧嘩しとるんやろなー…

でも,今日は違った。




「「お疲れ様でーすっ‼︎」」



あの2人が元気良く体育館に入って来たと思ったら,もうすでに事件は起きていた。


『離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せぇ‼︎‼︎』

「⁉︎」


2人に良く似た女の子が,侑に抱えられて連れられて来た。


「遅れてすんません!」

「まぁまだ始まってないでえぇけど,どうしたその子?」

「拾って来たの?」

『離せってぇ‼︎』ポカポカ!

「痛い痛い!」

「勧誘です」

「勧誘?」

「はい,マネージャーの」

「…なんや,早よ言えよ」

「いやあかんやろ⁉︎」

「どう考えても女の子嫌がってますけど⁉︎」

「え,なるって言うて喜びのあまり侑が抱えて来たとちゃうんか?」

『違いますよっ‼︎この_』

「「!」」

『いい加減に…!』グッ

「痛!」


『離さんかいっ‼︎』クルッ

「⁉︎」


数日前まで中3やった女の子とは思えへん程の運動能力,反射神経…


「悪い」

『もう…』

「いやなんでサムが謝るん⁉︎」

『いや顔うり2人だからどっちに謝られても別に』

「俺をサムと一緒にすんなや‼︎」

「なんやと人の事馬鹿にしたような言い方‼︎」

「あぁ⁉︎」

ドンッ,ガンッ

『…うるさい』

「「プシュー…」」

「2人の喧嘩を止めた…⁉︎」

「ツムサムの喧嘩を止めれる人が北さん以外におったんや」

「君は一体…?」


『こんにちは,侑と治の妹の宮あなたです!』


「妹ちゃん⁉︎」

「お前ら妹おったん?」

「おう!」

「俺似の美人やろ!」

「何言うとるんや,俺似や!」

「嘘つけぇ!」

『…』

「「…はい」」



「威圧だけで…凄いな」

「で,なんで連れて来たんや?」

「さすが北さん!それが本題や!」

「てな事であなた!」


「「俺らのマネージャーやってくれ‼︎」」


『あのねー…』

「「お願いします‼︎」」

『前も言うたけど,私はまだバレー界にあるかどうかは…』

「あなたのその実力は本物や!」

「俺らの力になってくれるやろ⁉︎」

「なんや,妹ちゃんは…」

『あなたでいいですよ』

「んじゃあなたちゃんは,中学の頃はバレー部なんか?」

『はい。』

「あなたは中学でキャプテンを務めた天才や!」

「俺らよりも強いで!」

「まぁお前らの妹やったらそうかもしれんけど…」

「あなたちゃん嫌がっとるんやろ」

「それにうちは女の子のマネージャーは雇わんようにしとるでな」

「先輩らで雇った時に,すごい虐めがあったらしいで」

『あー,それなら大丈夫です。それ何度かあったので』

「あったん⁉︎」

『はい,でも全員口ばかりで行動で示せって言ったら気弱かったので』

「さすが妹ちゃん。強気やな」

『強気やなかったらバカ兄2人の面倒見れませんよ』

「それもそうやな」

『一応バレーはツム兄とサム兄の影響で始めたんで,中学でもうえぇかなって思ったりもしてたんです。稲荷崎高校に進学するのは決めてたんで,バレーは頭から離してました。』

「やっぱり,やれへん…?」

「難しいんか…?」

『…さっき,ここの女バレのコーチに声掛けられたわ。兄妹揃ってバレーやるんか?って…マネージャーの話だって曖昧な事思ってない。むしろ真剣に考えとるよ。でも,最後まで続けたとして大人になったらどうすればいいん?』

「「…」」

「…一理あるわな」

「うん…」

「まぁあなたちゃん。」

「!」

「!」

「今決めやんでもえぇと思うで」

『…そうですかね』

「うん。今は自分のやりたい事やりぃさ」

『…分かりました』











「あのまま,あなたは女バレに入って,稲荷崎の女バレを大きく動かしてエースになり,"青い女王蜂"と呼ばれる名称を持った」

「すごいな,あなたは」

「俺らは今まで自分らの事ばっかで,あなたの心を読めんようになった。」

「俺らにとってものすごい辛い事や」

「あなたもそうやけど…俺らは一体何がしたいんやろう…」

「…」










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