第18話

弄ぶ
1,059
2020/07/18 10:56
「なんや,双子が怯えとる」

「どうしたんでしょうね」

「あれ見てみぃ」

「「?」」

「あなたちゃんの目が変わったで」





「よくやったぞ,日向!」

「本当だよ!」

「あざーすっ!」


『…』


「よし,スガさん,先輩,このまま次も_」


『ギロッ』


「ひぃ!」

「目が…」

「お兄さん達も怯えてる…」


『覚悟しいや,日向くん』

「ツ…」

『あんたは,私には勝てんよ』




「怒らせたんかな,あなたちゃんを」

「そうでしょうかね?」

「え?」

「もしこれも,あの10番の思い通りだったら…」

「どういう事や?」

「あなたちゃんの感情を乱して,自分らの思い通りにしてる。どれだけの相手がいても強いものは強い。そう思ったから,バレーではなく,本能で勝負に出た」

「まんまと,罠にかかったって訳や」

「まぁ,あそこまで怖いとは思ってなかったやろうけどな」





「ツム,行くでー」

「おう,任せろ」

『ツム兄!』ダッ!

「!」



アウトスパイク⁉︎

…なるほどな。

相手はとことん,潰す気やな。

加勢,すんで。



「どうぞっ!」

『っ!だっ!』


バンッッッ‼︎



本気で床が揺れた。

地震ぐらいに,音もすごかった。

あなたさんの目は本気だった。

本気で怒ってる。

でも怒ってる訳じゃない。

なんだろう…もう少し違う…





笑ってるんだ。





「行くでー翔陽くん」

「はい!」





舐められた気分

この子に。

まんまと嵌められた…

ほなこっちも,やり返さんとな

「やられたら倍返しせぇ」

そうオカンに言われてんねん。



「~ッ!」バンッ




「ツムも容赦なしか。女の子相手に」

「力加減すんの,忘れとった」

『いや,それでえぇんよ』

「「?」」

『あの女バレの主将は,前より確実に変わってる。絶対にレシーブされる!』






「ゔっ!」

「先輩!」

「ナイス道宮!日向,続けるぞ!」

「はい!」

「それっ!」

「っ!」ダンッ




「止めた!」

「サム!」



「うぉぉぉぉぉおおおわぁぁぁぁぁあ‼︎!」

「!」

「オラァ‼︎」


「弾き飛ばされた!」

『ゔっ!』

「ナイスあなた!」

『ツム兄,上げて!』

「おう!」

『サム兄』

「任せろ!」




「日向,来るぞ!」

「騙されないように慎重にだぞ!」

「スガもカバー!」




「ほれっ!」

『ツ!』



騙すんやったら,騙し返す。

落とされたんなら,落とし返す。

拾われたんやったら,拾い返したる。

これは全部,もう一度立ち上がる事が出来るから出来る事や。

何度でも何度でも。

まだ試合は終わっとらへん

バレーはタイムがない。

点数勝負。

流石に何時間もずっと動いたったら倒れてまう

でも,俺らには

私らには

時間なんて関係ない。

ずっと動いてられるんや。

なんてったって,こんなにも,こんなにも




「「『バレーが,楽しいんやでな』」」






「俺らやて,ずっと弄ばれとるんばっかとちゃうんや」

「その分,イラだっとるしな。顔には出さんけど」

『えぇか?私らには,目を合わすだけで考えとる事が分かるぐらいの信頼と絆がある。そう…なんでも分かるんや』

「今も」

「俺ら,何考えとるんやと思う?」

『ヒント,考えとる事は_』



1つだけや。








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