~草摩の廊下~
私は鼻歌を歌いながら草摩の廊下を歩く。
今日はこれから、十二支のみんなと会う。
特別な日ではないが、予定があったので久しぶりに会うことになった。
楽しみすぎて今にもスキップをしちゃいそう.....
まぁ、恥ずかしいからしないけど。
~草摩のどこかの部屋←~
ガラッ
私が行くと、既に私以外の十二支のみんなが揃っていた。
牢獄のことかな.....
まぁ、言わないけど....
言ったら絶対に止められるから。
なんで.....?
きょう兄にとっては良いことだったはず.....
とりあえず慊人さんのところに行かなきゃ!
早く行かなきゃ!
きょう兄がどこで何してるのか分かんない!
もしかしたら牢獄に......?
大丈夫、大丈夫。
みんなには絶対にバレちゃダメ。
私なら出来る。
私なら頑張って隠し通せる。
きさ姉の目から涙がこぼれ落ちた。
きさ姉は私に何かを伝えようと、目から雫をたくさん落としながら一生懸命喋っている。
私は一瞬、きさ姉の質問の意味を理解出来なかった。
『みんなに心配をかけたくないから』
そう言いたかった。
だけど......
もみじ兄が私の言葉を遮った。
りつ兄は、そう叫ぶと部屋から出て言ってしまった。
2人も部屋から出ていく。
みんな......
私、心配させないように頑張ってたんだけどなぁ.....
でも、ダメだ。
泣いたらダメ。
まだきょう兄のことも解決してない。
私は泣かないでしょ?
私はもう泣けないでしょ?
そう自分の心に問いかける。
私は泣かない。
私は泣けない。
私は.......
笑顔でいなきゃ。
そう言い放ち、すず姉も私を置いて部屋から出ていった。
はる兄はそっと私に謝り、すず姉を追いかけた。
3人も部屋から出ていく。
今、この部屋に残っているのは......
ゆき兄だけだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。