ある夜のこと。
あなたをこの店へ連れてきたおじいさんが亡くなりました。
それでもやっぱり、あなたから涙は出ません。
心は誰よりも泣いていました。
でもいつも、顔は少し微笑んでいて、眉もふっと上がっているのです。
店主は、あなたの行き先を考えているようでした。
おじいさんが大切にしていた人形ですから、もういらないのでしょう。
どこへ売られるのかしら。
そうなればもう、ドットに会うことは叶いません。
どうやら、まだここに座っておくことはできるようです。
夜中の店内で、動かない身体とそう考えていました。
「助けてあげようか」
どこからが声がします。
目の前にいたのはおじいさんでした。
幽霊でしょうか。
夢でしょうか。
「星になったんだよ」
「お前を作った人に、挨拶した」
世界一腕のいい人形職人は、なぜあなたを作ったのでしょうか。
それは、16歳の娘がこの世を去ってしまったからです。
娘に似た人形を作り、自分を慰めようとしました。
しかし、人形職人はすぐに、娘の後を追うように亡くなりました。
その後、その人形の美しさに見蕩れ、あるお国のプリンセスの元へ届けられたのでした。
「お前の願いはなんだい?」
「言ってごらん」
はっと口元に手を当てました、話せる。
それに、そもそも手を口元に当てるなんて行為もできる。
白い星のような細やかな光があなたの周りに集まると思うと、静かにあなたは立ち上がりました。
視界が高い。
自由に動ける。
人間になったのです。
あまりの嬉しさに、あなたは歌いだしました。
When you wish upon a star
Makes no difference who you are
Anything your heart desires
Will come to you
輝く星に心の夢を
祈ればいつか叶うでしょう













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!