夏の陽光は、暴力的なまでの白さを帯びて空気を焼き尽くしていた。
アスファルトからはね返る熱気が、陽炎となって視界を歪める。その熱の渦を切り裂くように、一人の男が歩いていた。
男の真っ黒なスーツは真夏の光を執拗に吸い込み、逃げ場のない熱をその内側に溜め込んでいる。
噴き出した汗がシャツを皮膚に張り付かせ、不快な湿り気が全身を支配していた。
男は耐えかねたように、重たいジャケットを脱いで乱暴に右肩へ引っ掛けた。
左の頬は赤く腫れ上がり、脈打つたびに鋭い痛みが走るようで、時折彼は顔を顰めた。
ふと、鼻先を抜ける潮風の匂いに、喪服を着た男_ゴヌは喉の奥を締め付けられた。
この潮騒も、まとわりつく湿気も、かつてある女と過ごしたあの狭いアパートの記憶へと、彼を強引に引き戻していったからだ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。