ガシャァァァァァァァ!!
部屋に響いたのは破壊音。
急な音に心臓が跳ね、足を止める。
視線を移した床の上に散らばっていたのは、何かを形作っていたはずの陶器の残骨達だった。
待って、よく考えて。
扉の横にある木の台の上に置かれていたのはなんだった?
確か・・・壺?だったような。
で、どうしてそれが私が通った瞬間にこんな無残な姿になったの?
誰ともなしに聞いてみる。
肯定の言葉を期待したのに。
帰ってきたのは、キムテヒョンが発した非難の言葉で。
ぐっと言葉に詰まる。
当たってはいないけれど、私が通った瞬間に落ちたのは確か。
この中で落とした可能性があるのは私だけ、だ。
ワールドワイドハンサム。
中学の美術の教科書に当たり前に出てきた名前。
その作品が高価で国立美術館にも厳重に保管されているなんでことは常識も常識。
"国宝"とまで言われるものだ。
それが事実だとすれば、6千万なんて額も、もっともな数字だ。
事実だとすれば。
そう聞くと、ジョングクは立ち上がり、部屋の片隅にある棚の引き出しを開けた。
その棚の中から出されたのは、
色々と書かれた分の上に印が押された書類。
それがあるということは、この壺がほんとのだということ。
・・・最悪だわ。
6千万。
常識で考えて世間一般の高校生には払えるわけが無い。
ただ、自慢する訳では無いけど、これでも私はBTS女子大付属出身だ。きっとあの人に頼めばお金を出してくれるだろう。
とても気が思いけれど。
にやり、彼は笑う。
私がそう答えるのを予想していたかのように。
その言葉にパットジミンの表情を窺う。
糸目の瞳には、薄らと涙の膜が張っているように見える。
それを見た瞬間、弾かれたようにジミンに駆け寄った。
座っている彼の視線に合うように、その場で膝を着く。
込められた"記憶"を消してしまうのは恐ろしいほどの大罪だ。謝るだけでは済まされない。
と再度詫びる私に、彼はゆっくりと口を開いた。
聞き漏らすマイと耳を澄ます私に、彼は満面の笑みを浮かべる。
その条件は。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。