第17話

🖤
5,824
2020/09/08 19:01
ガシャァァァァァァァ!!


部屋に響いたのは破壊音。


急な音に心臓が跳ね、足を止める。


視線を移した床の上に散らばっていたのは、何かを形作っていたはずの陶器の残骨達だった。


U
U
・・・



待って、よく考えて。


扉の横にある木の台の上に置かれていたのはなんだった?


確か・・・壺?だったような。


で、どうしてそれが私が通った瞬間にこんな無残な姿になったの?


U
U
・・・私当たってないわよね?



誰ともなしに聞いてみる。


肯定の言葉を期待したのに。


テヒョン
テヒョン
・・・お前、割ったな



帰ってきたのは、キムテヒョンが発した非難の言葉で。


U
U
割ってないわよ。当たってもないのに落とすわけないでしょ
テヒョン
テヒョン
お前が通るまで普通に置かれてたのに、通った瞬間落ちたんだ。誰のせいだ?



ぐっと言葉に詰まる。


当たってはいないけれど、私が通った瞬間に落ちたのは確か。


この中で落とした可能性があるのは私だけ、だ。


U
U
・・・わかった。弁償するわ。いくら?
ジョングク
ジョングク
6千万
U
U
ろっ・・・?!真面目に答えてよ
ジョングク
ジョングク
真面目も真面目だ。それワールドワイドハンサムの壺だぞ?



ワールドワイドハンサム。


中学の美術の教科書に当たり前に出てきた名前。


その作品が高価で国立美術館にも厳重に保管されているなんでことは常識も常識。


"国宝"とまで言われるものだ。


それが事実だとすれば、6千万なんて額も、もっともな数字だ。


事実だとすれば。


U
U
ワールドワイドハンサムだと言う証拠はあるの?



そう聞くと、ジョングクは立ち上がり、部屋の片隅にある棚の引き出しを開けた。


その棚の中から出されたのは、


ジョングク
ジョングク
ほら、鑑定書だ



色々と書かれた分の上に印が押された書類。


それがあるということは、この壺がほんとのだということ。





・・・最悪だわ。


6千万。


常識で考えて世間一般の高校生には払えるわけが無い。


ただ、自慢する訳では無いけど、これでも私はBTS女子大付属出身だ。きっとあの人に頼めばお金を出してくれるだろう。


とても気が思いけれど。


U
U
・・・払うわ。どこに振り込めばいい?



にやり、彼は笑う。


私がそう答えるのを予想していたかのように。


テヒョン
テヒョン
悪いが弁償してもらってもこっちとしちゃ許せないんだ
U
U
・・・どうして?
ユンギ
ユンギ
形見だよ。ジミンの爺さんのな



その言葉にパットジミンの表情を窺う。


糸目の瞳には、薄らと涙の膜が張っているように見える。


それを見た瞬間、弾かれたようにジミンに駆け寄った。


座っている彼の視線に合うように、その場で膝を着く。


U
U
ごめんなさい、ジミン。謝って許して貰える問題じゃないけど・・・。
U
U
もちろん弁償もするし、それ以外に何か私にできることない?できることなら何でもするわ



込められた"記憶"を消してしまうのは恐ろしいほどの大罪だ。謝るだけでは済まされない。


U
U
本当にごめんなさい



と再度詫びる私に、彼はゆっくりと口を開いた。


ジミン
ジミン
ほん、と?なんでもしてくれる?
U
U
えぇ、なんでもするわ
ジミン
ジミン
じゃあ、弁償はしなくていいよ
ジミン
ジミン
その代わり。



聞き漏らすマイと耳を澄ます私に、彼は満面の笑みを浮かべる。


その条件は。


ジミン
ジミン
あなたちゃん。生徒会の副会長になって





















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