━━━━━━━ワケあり物件
ジョングクside
ドアを開けた瞬間、気の抜けるような声がした。
アイツに名前を呼ばれたくらいでこんなにご機嫌になるなんて、どんだけ単純なんだ。
だけどその素直さは、たまに羨ましいと思ったりもする。
絶対言わねーけど。
タバコを吸いながら、ホソクヒョンとユンギヒョンは俺を見ながら目を細める。
ゆるくゆるく、決して掴まれないように人との距離を保つヒョン。
俺には無理だと、真剣に尊敬する。
チッ。 目ざとい。
誤魔化せるなんざ、最初っから思っちゃいねーけど。
ちらと上座に目をやれば、貫禄たっぷりに座るテヒョニヒョンの姿が目に入った。
また視線をずらせば、楽しそうにパソコンを弄っているナムジュ二ヒョン。
"普通"の高校生ってなんだ?
ふと考える時がある。考えるだけ無駄だけどな。
ドカッと、ホソクヒョンの向かいのひとりがけソファーに腰を下ろす。
ポケットからタバコを取り出して、口にくわえて火をつけた。
ゆっくり紫煙を吐き出せば、一瞬だけ視界が白に染まる。
その隙に。誰の顔も見えないその瞬間に、俺は口を開いた。!
だんだんクリアになる視界の中で、思った通りの表情を浮かべる6人。
おかしいところがありすぎんだよ。
バンタンに通わせたり、一人暮らしさせたり、なんて。
メガネを押し上げながら、ナムジュ二ヒョンが尋ねる。
その先にいるのは、眉間に皺を寄せたテヒョニヒョンの姿。
気にならない、ワケじゃないだろうに。
だけど理由は分かる。
ここにいるヤツ、全員がそうだからだ。
全員が"ワケあり物件"。
だからですよね? テヒョニヒョン。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。