低い声が、私の鼓膜を震わせた。
バイクに跨ったまま、彼はガッと私の胸倉を掴む。
ナムジュンとジミンが留めに入ってくれるけど、カレの怒りの色は治まらない。
ギリ、と1度だけ胸倉を掴む手に力を込めた。殴りたい気持ちを我慢してるのかもしれない。
でも、
くらりと、湧き上がった感情のせいで視界が微かに揺れた。
望んでもないこの状況に、我慢してるのはこっちの方だ。
パシっと、ジョングク野手を振り払う。
それが予想外だったのか、枯葉少しだけ目を大きくした。
あの女たちも、生徒会の人間も。
何も知らないくせに、好き勝手な事ばかり。
叩かれたり、掴まれたり。本当、うんざりだ。
誰も、私の邪魔をしないで。
馬鹿馬鹿しい。
バンタン学園の人間も、彼らも、私も。
ジミンの戸惑った声に、少しだけ息が苦しくなった。
今まで黙って事を見ていたテヒョンが急に私の名前を呼ぶ。
返事をしないまま、顔だけ彼の方に向けた。
バンタン学園のトップ。
それは屋上でのことを言っているのか。
それとも、学校を抜け出してからのことを言っているのか。
どちらにしても、
呟いた彼はゆっくりと私に近づく。
何をするのかと思えば。
くしゃっと、1度だけ私の頭を撫でた。
そのまま私に背を向けて歩き出す。
舌打ちが聞こえたかと思えば、鳴り響くのはバイクのエンジン音。
何も言うことなくジョングクはこの場から走り去った。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!