━━━━━空気の底
少し湿気の多い、もったりとした夜風に吹かれながら目を閉じる。
マンションのベランダに置いてあるイスに腰掛けながら、今日の出来事を思い返していた。
『引きずり込む』と、そういったテヒョンの言葉。
じわり、と胸の中心が熱を増す。
素直に口には出せなかったけれど、本当は、眩暈がするほど嬉しかった。
不謹慎だけど、助けに来てくれたことも。
私の勝手なイメージだけど、生徒会のメンバーはあまりそういうことに気を使わなそう、というか。
特にジョングクなんて、"放って置いたら治る"とか言いそうだ。
ふと輝くブロンドの髪をした彼の姿が脳裏に浮かんで、眉を寄せながら瞳を微かに開いた。
『普通の1人暮し』と、そう言った私の顔を見て、訝しげな表情を浮かべたジョングク。
もしかしたら、あの言葉が嘘だということに気づいたのかもしれない。
私は自分がジョングクに言ったあの言葉が、間違っているとは思わない。"真実"なんて言えるはずがない。
今日生徒会室でみんなが言ってくれた言葉は嬉しかった。
嬉しかったし、きっと彼らに私は好意を持っている。
1度も間違えずに、彼らと正しい関係を結べるだろうか。
もし目の前から"私"が消えたら、・・・なんて。
そんなこと、考えたって意味は無いのに。
ゆらゆらと、視界の先で月が朧げに揺らめいていた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。