第19話

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2021/09/02 14:23


あれから俺はどうやって家に帰ってきたんだろう



時間はもう深夜3時ごろを回る

ベットに入る気にもなれない


無駄に広いリビングにあるソファーに
力が抜けたように座っていた




どうしてこうなったんだろうか


一緒に食事をしてお酒を飲んで
前会った時より心の距離をより近く感じたし
改めてあなたのことが好きなんだと再確認していた



正直焦ってしまっていたのかもしれない

お互い住んでいる国も違うし
仕事のスケジュールも合いにくい



やっと会えたからこそ
この一緒にいる時間で
関係性を深めたいって思った



元々今日、告白をする予定はなかった
けど一緒にいてあなたといて恋人にしたいって
強く思って思わず行動に出てしまった



正直、俺は自惚れてたのかもしれない



連絡の返事はしてくれるし
韓国まで遊びに来てくれて
ディナーの予定も合わせてくれた


前に空港であなたが電話越しに
会いたいって言ってくれて
俺と同じ気持ちと思っていた


なのに…




「好きじゃない…か…」




心が砕けたってこういう気持ちなのか


たくさんの恋愛の歌を歌ってきたけど
よく分かってなかったのかもしれない


未だに自分の身に何が起きてるか
把握してないように思える



自分のスマホを見る



「今日は本当にごめん」


「もう一回だけ会ってほしい」


「話だけでも聞いてほしい」



いくつかあなたに送ったメッセージ

あなたの既読は付かない



それを見てジョングクはため息を吐く


こんなにもあなたのことが好きなのに

あなたは俺のどこが嫌いなの?

どうして、韓国まで来てくれたの?





あなた…俺は納得できないよ


だって俺たち、こんなにも気が合って

一緒に居て楽しくて笑い合ったじゃん…




ちゃんと話してくれないと分からないよ…












〜〜〜〜









「え?どうしたの、ジョングク」



今日の仕事は事務所で今後のスケジュールと
次回のワールドツアーのライブ内容の確認


メンバーやスタッフがぞろぞろ揃ってきている中
ジョングクの足取りが重かった


その様子を一目見ただけて
メンバーはただ事じゃないのが伝わる



「なんかあったの?」

ユンギがジミンに耳打ちする



「ヒョン…実は昨日例の女性とデートのはずなんだけど…」


「あなたさんって言ったっけ?」

ナムジュンも話に加わる


「会えなかったのか…?」

ユンギが首をかしげる


「うーんそれなら昨日のうちに誰かに愚痴の電話でもしてそうだけど…」

ジミンはそう言いながらメンバーを見渡す

ジミンの声に周りのメンバーは首を振る




「ジョングギ、大丈夫か?」


勇者が一人いた

テヒョンが何もためらいもなく
ジョングクに話しかけて肩を組む




「…大丈夫じゃないです」



ジョングクの声は
今までに聞いたことないぐらい弱々しく小さい



「何?昨日あなたさんと会えなかったの?」


他のスタッフに聞こえないように聞く



「会えましたよ…会えたけど…」



ジョングクは言葉に詰まる

こんな彼を見るのは本当に珍しい




「…今は仕事中だから後でゆっくり話聞こう」


二人の会話を聞いてサッと入ってくれたホソク




ジョングクは泣きそうな顔で黙って頷いた






〜〜〜〜






「え!振られた!?」




7人はジョングクの家にいた


仕事を早く終わらせて集まった

ジョングクの話を聞くために



「しかも、そんな振られた方って…」


ジミンがショックを受けたように言う



「あんまりだな…」

ユンギはみんなが思っていた言葉を発した


「その通りだよ…だってそれまで普通に楽しく過ごしてたんだろ?」

ナムジュンはユンギを否定せず言う



「韓国まで来てるんだよ?そんなことまでしといて好きじゃないって…」

ユンギは話を続ける



「…そりゃジョングクも混乱するよな」

ジンはそう言ってジョングクの肩に腕を回す



ジョングクは俯いて何も言わない



「心当たりもないしな…あなたの気持ちに何か変化があったとか?」

ナムジュンは考えるように話す





「…ジョングクには悪いけど、そういう女性だったんじゃない?」

テヒョンの言葉にジョングクの体はピクッとする





「芸能人のお前を惚れさせるようなゲームをしてたんじゃないのか?」



テヒョンの言葉にジョングクは顔を上げる




「ヒョン…あなたはゲームで俺と連絡を取ってたって言いたいわけ?」

ジョングクの顔は怒りで満ちていた


「そう考える方が簡単だろ?俺たちのことをそういう風に見ている人もいるんだよ。男と遊びたい女性もいるんだ」

テヒョンは残酷な言葉を続ける

でも、これは現実問題、全然ありえる話だ



芸能人を騙したりハメたりして
遊びだったり商売にするようなケースは
今まで芸能界にいるとよく聞いていた

他のメンバーも静かに頷く



「違う…あなたはそんな人じゃない…」

ジョングクはそう言って立ち上がる



「ジョングガ、俺はお前を怒らせたいわけじゃないんだよ」

テヒョンはそう言ってジョングクの手を掴む



「…一人にしてください」

ジョングクはそう言って
テヒョンの手を軽く振り払って寝室に入っていった




ドアは閉まった瞬間、メンバーは大きなため息を吐く





「嘘だろー。こんなことになるなんて」



「本当にそんなやつなのかな?あなたさんっていう人は」

ホソクとナムジュンは言う



「…そんな風には見えなかったけど…」

ジンは腕を組む



「…俺もそう思う。たくさん話したわけじゃないけどあなたさんがそんなことするように思えない。ちゃんとジョングクのこと考えてくれてたよ」

ジミンの言葉にテヒョンはため息を吐く



「俺だってそう思うよ?だって毎日ジョングクが連絡とってる時の表情見たら、すごく楽しそうだし嬉しそうだし、あいつのエネルギーになってた。そんな女性だって…」



「…でも、誰かがああでも言わないと、ジョングクは忘れないんじゃない?」

ユンギは言う



ああ…さすがヒョン
俺のことをよくわかっている



テヒョンは嬉しそうに少し微笑む




「振られてるんだ。どうしようもない。次に進むにはああ言った方がまだ納得できるんじゃない?」

ユンギは言葉を続ける



「うん…」

ジミンは納得しない顔で呟く




「みんなでジョングクを元気つけよう。忙しく仕事をしていたら、すぐに忘れるよ」

ホソクは明るい声で話す



その声にメンバーは頷く

でも、その中に2人納得してないままの人がいた



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