第5話

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2021/09/01 09:05
あの電話から3ヶ月が経った

人並じゃない忙しいジョングクが2日だけ
日本に来れるスケジュールを組んでくれた

とはいっても半分は仕事だけど


あの電話から変わらず連絡は取っているが
あれからジョングクの恋愛事情について触れられることはなかった

冗談まじりで相談乗ってあげるよ!
とか言ったのがまずかったのか…

私の恋愛事情はちょくちょく聞いてくるくせに
自分の恋愛の話はしてこなくなった

芸能人だから仕方ないよね…
そう思うと突っ込むべきではないなと感じる

まだ若いし恋愛したい年齢だろうに…


そう思って電車の中でスマホでジョングクの名前をググってみた

ふと顔を見たくなったからだ

そう思ってたのに最初に出てきたのはデカデカとした文字だった


“人気急上昇ガールズグループの〇〇〇!正々堂々BTSジョングクに熱烈アプローチ!?”


「え?」

思わず声が漏れる
画面をタッチしてみるとジョングクの初となる恋愛報道のようだ


韓国で人気急上昇しているアイドルが
バラエティ番組で
好きな男性のタイプを聞かれてジョングクの名前を出したという

恋愛事情が敏感な韓国芸能界で
かなり稀な発言だそうだ


それはきっともう付き合っているか親密な関係だからこそ
発言したのではないかという内容だった


思わずのそのアイドルの名前を検索する



「うわ…めちゃくちゃかわいいやん」



急に現実を突きつけられる

そうだよ
ジョングクはこんな可愛くて若くて
才能に溢れる人たちと同じ世界でいる

こんな子に公開告白されて嬉しくないわけがない


ほぼ毎日連絡を取っていてその感覚は薄れていたけど
急に思い出したような感覚になる

そうだ…彼は芸能人でトップスターだった




そんなことを思っていたら
ジョングクからのラインメッセージが届く

リアルタイムすぎて心臓がドキー!となった



「いよいよ明日だ!朝、日本について撮影が夕方までだからお店で直接待ち合わせにしよう」


ジョングクのカジュアルなメッセージに
予約してくれたであろうお店のURLが貼ってある

開くとかなり高級なお店っぽい
さすがスーパースターだな…


私は楽しみにしていた気持ちと同時に先ほどの記事が頭にチラつく



私はただ「了解」だけ送信して、スマホを鞄に閉まった



〜〜〜〜



『…こんな格好で大丈夫かな?』


家の鏡の前で呟いてみる

今日は家で仕事をしていたので家から
ジョングクが予約してくれた店に向かう


家にある服の中で最もシックで
高級感のある服を選んだ

正直言うと、5つ下の子とのディナーに 
気合を入れてる自分がいた
少し恥ずかしくなったが、せっかくのご飯だもん
と自分に言い訳を作って足早に家を飛び出した




~~~



『え?ここ?』


スマホの地図機能で連れてこられた場所は都内の高級ホテルだった
ここの最上階のレストランらしい


『え~こんなところ来たことないよ…』


1階のフロントで受付をすると専用エレベーターに案内されて
一気に最上階に連れていかれる

ドアが開いた瞬間、綺麗な夜景が一面に広がる


「こちらです」


店員さんに連れていかれたのは一番奥の完全個室の部屋だった


開けるとそこには夜景を見ていたジョングクの姿が

すぐにこちらに気づいて満面の笑顔になる

「あなたーーーー!!」


ジョングクは立ち上がって駆け寄り私を抱きしめた


『!!』


「久しぶりー!」

ジョングクは嬉しそうに叫ぶ
私も嬉しい気持ちでいっぱいだが
それ以上にびっくりして一瞬声が出なかった


抱きしめられて初めて知った

ジョングクってこんなに身長高いんだ
こんなに鍛えられた身体をしているんだ


5歳も下だなんて思ってたけど
男の人だって一瞬にして感じさせられた

電話をした時はあまり感じなかった緊張感が急に走る


ジョングクは体を引き離すと笑顔で見つめる


「やっと会えましたね。でも、毎日連絡は取ってたから久々感はないね」

ジョングクはそう言ってクシャと笑う
ああ…この笑顔すごく懐かしく感じる
シックな場所と姿だが、その笑顔はあの新大久保の日と変わらない

『…そ、そうだね。久しぶりな感じはしないね』


こっちどうぞとジョングクが座ってない方の椅子を引いてくれた

私はお礼を言うとそこに座る
ジョングクは向かいの椅子に座る

二人は向かい合う


会うのは2回なのにそんな感じがしない
でも前回会ったような少年のような感じが今日はしない

かっこいい服を着て髪も綺麗にセットしている
良い意味で別人に見える


「なんか不思議な感じですね」

ジョングクは笑顔でじっと私を見てくる



『それ私も思った。なんかジョングク違うように見える…』


「え?ほんと?撮影だったからついでに髪セットしてもらってたんですよ」


ジョングクは自分の髪に触れる



『ほんとだね。なんか大人っぽい』


うんうんと私はうなずく



「へへ…ありがとうございます」

照れたように笑う
そのたびに私の心が少し締め付けられる


ジョングクは飲み物のメニューを広げながら渡してくる


「まずはシャンパンで乾杯でいいですか?それとも大好きなビールにする?」

ジョングクはニヤニヤして質問してくる


『ビール大好きだけど、せっかくこの雰囲気だからシャンパンにしようかな』








久々の再会にシャンパンで乾杯して
事前に注文してたコース料理を二人で堪能した


6ヶ月ぶりの2回目の再会


この日をどれだけ楽しみにしていたか


初めて会ったあの日
あなたは少しカジュアルな服装でも可愛かったけど
今日のシックなスタイルのあなたはすごく綺麗だ


目の前で笑顔で楽しそうに笑うあなたを見てこっちもつられて笑ってしまう


あれだけ毎日のように連絡を取っていたのに話が尽きない


俺の仕事の話も嬉しそうに聞いてくれるし
あなたも自分の話をたくさんしてくれる


すごく楽しい…


日本には仕事で何回も来ていたが
こうやって仲良くなれる人が日本にはいなかった


俺の中であなたがどんどん特別になっていく





『私、ジョングクと連絡取ってて感覚が麻痺ってたんだけど…』


「うん?」

ジョングクはワインを飲みながら首をかしげる



『ジョングクはスーパースターなんだよねぇ~』

私はジョングクの顔をじっと見つめる



「どしたの?改めて…w」


ジョングクはフフと笑う


『普通のごはんなのにこんな高級なレストラン予約してくれてるし、名前検索したら大量の写真や記事が出てくるし…』


ジョングクは私の少なくなったワイングラスに赤ワインをついでくれる


「普通のごはんでこんなオシャレなお店予約しないですよ?ちゃんとあなたをエスコートしたくて調べました」


『え?そうなの?ジョングクの中では普通なのかと思ってた…』


ジョングクはフフフと笑う



「へ~。俺の名前ネットで検索したりしてるんだ~」


ジョングクはいたずらっぽい笑顔でニヤニヤする




『えっ…』


「あなた、いやらしーなーww」

ジョングクのニヤニヤは止まらない



『変な意味じゃないよ!知らないことが多いから、少しはジョングクのこと知っときたいと思っただけで』



「知っておきたいって…俺に直接聞けばいいじゃん?ネットの情報なんて信じたらだめだよ~」

ジョングクはなぜか嬉しそうにワインを飲む



『まぁそうなんだけど…そういえば彼女のこととか出てたよ?』

昨日電車の中で見た記事を思い出す

「彼女?」

ジョングクはキョトンとする


『熱愛相手みたいな感じで可愛いアイドルの写真が出てきてたよ?』

私はニヤリと笑うように問いかける


「なに?全然話についていけないんだけど…」

ジョングクは少し真剣な顔になってスマホを出して検索する




「…え?初めて知ったし、会ったことない人なんですけど…」


ジョングクはスマホ画面を見ながら眉毛をしかめた




『え?そうなの??』


「歌番組でも共演もしたことないと思うし…公開告白って…ありがたいけど、これがなんで熱愛になるんだ?」


いみわかんねーとジョングクは少し拗ねるようにスマホをポケットに閉まった



『…大丈夫?会社に連絡とかするの?』

あなたは少し心配する

もしかして余計なこと言ってしまったのかな



「いや!大丈夫!こういうことはよくあるというか…そこは気にしてないですから」

とか言いつつ少し不機嫌になったジョングクはワインを一気に飲む



『気にしてないって…なんか怒ってんじゃーん』

あなたはジョングクのその態度が謎で聞く




「俺が今ムッとしてるのは、そのあなたの態度…」

ジョングクはぼそっと答える


『え?なんて?』



「…なんで俺がアイドルの子と熱愛って出てそんな平気な態度で俺に言うんだって…」


さっきまで芸能人オーラバリバリな大人な雰囲気だったジョングクが
急に小さな男の子に見えた


『平気な態度?』


「ほら動揺だったり、本当だったらどうしようって不安だったり…」

ジョングクは必死にジェスチャー付きで説明する



『なんで私が動揺したり不安になるのよ』

私はクククと笑いをこらえるようにボトルワインに手を伸ばした

するとジョングクは「ボトルは男が注ぐので」と
奪い取るようにボトルを取ってあなたのグラスにワインを注いだ



…かわいい

急に24歳の男の子になっちゃうんだもん


この子はいろんな面を持ってるんだなぁ…



「それは…」

ジョングクは口ごもる

いつもの強気なジョングクが
今はいないみたいだ



『正直、この記事みた瞬間は動揺はしたかな?』


私の言葉にジョングクは目を見開く



『ジョングクの話してた子はこの子なのかなって思ったから』


「そんなマスコミの嘘を…」


『だから機嫌直して?』




俺はうつむいてた顔を上げる笑顔のあなたと目が合った


あなたはニコッと俺に微笑みかけていた

ああ…
敵わない気がしてきた
このヌナには…




「…うん」


俺は恥ずかしくなって注いだばかりのワインを一気に喉に流し込んだ

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