第7話

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2021/06/24 10:55

それから二人は窓側の小さなテーブルと椅子で
冷蔵庫にあるソフトドリンクを
飲みながら話を続けた



先ほどあれだけ話をしたのに
話が尽きないのは本当に不思議だ




俺はあなたの顔をじっと見る


一目会ったときから
どんな人なのか知りたい
話してみたいって気持ちがあった


元々人見知りで、知らない人と話したりするのは苦手だけど
あなたと出会った俺の中には
人見知りな部分が無かった



今こうやって話してる時間も
メンバーといるときみたいに楽しいし落ち着く

そんな気持ちもありながらも
ARMYの皆に見せるような
カッコいい自分も出したいなと思う部分もある





…って思ってたのに、酒飲みすぎてトイレで死んでたとか

恥ずかしすぎる

なんでそんなダサいことしてしまったんだ…



一人で色々考えていたジョングクは頭を抱えだした



『え?なになに?急に!頭痛いの?』

ジョングクの突然の行動にあなたはびっくりする



「いや…俺なんであなたの前で酔っ払ってあんな失態を犯しちゃったんだろうって…ダサすぎる…」


『…ぷっ』

ジョングクが明らかに落ち込んでいるのを見てあなたは思わず吹き出す




「ヤー!笑わないで!あなた!」

ジョングクは怒ったように言う



『いや笑うでしょ!可愛すぎじゃん。ジョングクがメンバーたちに可愛がられる気持ちが本当に分かってきたよ』


あなたは手で口で抑えて笑う
楽しそうに笑うあなたを見て思わずジョングクは可愛いなって思うってしまった



「…こんなことは本当初めてなんですよ。緊張しちゃって…」


『…え?』



緊張しちゃって?

わ、私に??


あなたがキョトンとした顔をしてると
ジョングクは少し真面目な顔つきであなたを見つめる


「俺、あなたが思ってる以上に人見知りで、特に女性はメイクさんやスタイリストさんみたいな仕事関係の人しか交流がないんだ。それにみんな年上で仕事上の付き合いだから緊張もなにもないし…」



『…私も年上なんだけど?しかも5個も』

あなたはツッコむように言う



「あなたは年上の前に、初めてのプライベートのヌナなんだ。良い意味で緊張しちゃうんだよ」

少しジョングクは顔を赤らめる

あなたはジョングクの口から『ヌナ』という言葉が出てきて少し恥ずかしくなる



『緊張って…そのメイクさんたちみたいに気軽に接してくれていいのに…』

あなたはジョングクと目が合わせたくなくて俯く



「あなたはヌナたちとは違うよ…なんでか分からないけど」

ジョングクの言葉にあなたは顔を上げた
二人の視線が絡む




『…ま、まだ2回しか会ってないからね。私もジョングクに会うの楽しみにしたけどその分緊張もしたよ?』

あなたはまた目を逸らして外を見ながら言う



「あなたヌナ、目を逸らさないで!さっきまで俺のこと見てたじゃん」

ジョングクが正面から迫るように近く
チラっと見るとジョングクの大きな目がこっちを可愛く睨みつけている

これは完全に私をおちょくっている顔だ


『ねー!その定期的に私を茶化すのやめてくれるかな!』


「茶化してるのはどっちだよ!俺は真剣に話してるのに!」

ジョングクは騒ぐようにまた顔を近づけてくる


『どこが真剣なのよ!いちいちあざといのよ!』


「あざといって何?それは俺じゃなくてジミンヒョンの担当なんだよ!」


『担当?知らん!知らん!』

二人はしばらく言い合いをした




「『……ぷっwwwww』」

急に馬鹿らしくなった二人は向かい合ったまま吹き出してしまった



『はははは!何よーー!っw』

「あなたが子供っぽいこと言うからだろー!」

『誰か子供よ!私より5つも下のくせに!』

「あなたはジンヒョンと同じってことは精神年齢俺より下ってことだから!」

『だからそのBTSメンバーで例えるのやめてよw』


二人はまた言い合いをして笑い合った



こんな人と言い合いして笑ったなんていつぶりだろう

いつの間にか大人になって、友達と遊んだり飲み行ったり旅行したりするけど

こんなふざけて言い合いをするなんて滅多にないw


そうか相手は5歳下の男の子だからか…?
それとも私が素の姿でふざけれる相手だから…?


そんなこと思っているとジョングクは立ち上がって部屋についてる電話に手に取った




「あ、ルムサービス、ダイジョウブでスか?」

ジョングクは日本語でルームサービスを頼みだした


『わ!すごい!日本語うまいんだね!』



しばらくジョングクは小声の日本語で何かを注文して電話を切った


『ん?お腹すいた?何頼んだの?』

ジョングクはんー?とニヤニヤした顔で戻ってきて椅子に座り直す



「ワインとおつまみ」

ジョングクの言葉にあなたは目を丸めて立ち上がる


『は!?あなたさっきまで酔っ払ってダウンしてたでしょうが!』


「俺はもう酒抜けちゃったんだよ!もう倒れないから飲み直そう^^」


ジョングクの言葉に拍子抜けする
さっきまで必死に介抱して心配した気持ちを返して欲しい


「あんたって…」

『ん〜?』

ジョングクはニコニコして顔をかしげる


もう怒る気も失せたわ…



「あなたヌナ、そろそろすっぴんになったら?」

『はい?』

「俺はあなたのすっぴん見るために日本に来たんだよw」

ジョングク笑ってしまってるやん
この子茶化す時とお願いする時は「ヌナ」を付ける気だ


『なんですっぴんになるのよ!泊まるわけじゃないのに』

あなたの言葉にジョングクは目を見開いて携帯の時計を見る



「こんな時間に一人で帰らせるわけないじゃないですか」

『はい〜?』

「俺も明日午後までフリーだし、まだまだゆっくりしよう!どうする?どっち先にシャワー浴びる?」

…この男、マイペース過ぎないか?
私が断れないの分かってて言ってるな…


「ヌナがいかないなら俺先にシャワー浴びてきますね!ルームサービス届いたらよろしく〜」

ジョングクは手をひらひらさせてバスルームに向かう


『ちょっと!私帰るからね!絶対すっぴんにならないし、泊まらないから!シャワー浴びてる間に帰るから!』

あなたはジョングクの背中に向かって叫ぶ


「ダイジョウブ!あなたはそんな勝手に帰るような人じゃないの知ってるから」


『〜〜〜』

自分がジョングクに舐められているのに気が付いた
でもここで帰れない自分がいるのは本当だ

ジョングクに頼まれると、この程度のことなど聞いてしまうのだ


これが黄金マンネのすごいところだと、再度認識させられた

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