第13話

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2022/01/29 04:26

羽田空港の国際ターミナルに着いた
あなたがタクシーから降りた

何も考えずに家を飛び出してタクシー捕まえてここまで来た


考えてなさすぎて昨日とは違った
かなりカジュアルな姿

タクシーから降りた瞬間「しまった…」と思った



さて、着いたもののどうすればいいのか?

そもそも芸能人ってなんか特別なルートで飛行機乗るんだっけ?


あ、そうか私今到着口側にいるのか
出発口の方に行っといた方がいいのかな?

そんなことを思って向かっているとスマホが鳴る


画面を見ると、今から一目会いたい彼の名前が




「 あなた!?本当に空港に来てくれるの!?」

ジョングクの声は嬉しそうに聞こえる
それだけでも私の心は高まる



『今着いたところだよw』


「え!もう?俺たちももうすぐ着く!」

あなたは電話を繋いだままキョロキョロして移動をする



『え…?』

搭乗口側に近い車寄せに人がかりが…
これってもしかして…


「 あなた?今どこ?俺たちのワゴンも、もうすぐ着くと思う」


『…ジョングク。なんかめっちゃ人いるんだけど…多分これって…』

電話の向こうでジョングクが「あー」と呟く



「そうだね。多分ファンの子たちだ。帰りのフライトの情報も漏れてるんだな…」


ジョングクの声のテンションが下がってる
あなたはその声を聞いて察した


『さすがファンだね!遠くから見送るよ』

「…あー本当にごめん。せっかく来てくれてすぐそこにいるのに…」

ジョングクの言葉で直接会って話せないことを察する
そりゃそうだ。公共の場にファンがいるわけなんだから話せるわけがない


『謝らないで!私が行くって言い出したんだから』


あなたの視界内に黒い大きなワゴンが2台入る

距離は30メートルぐらい



「… あなた、すっぴんでしょ?」

電話の向こうでいたずらに笑ったような声がする


『!?』

あなたは思わず顔に手を当てる


「ハハハ!今車の中から見えた」

あなたはワゴンをじっと見る
外からは中の様子は全く見えない

ファンの子たちは何人かは
ザワザワして車に寄っていく
構えていた警備員がそわそわし出す



「…あなたの姿見れてよかった。来てくれてありがとう」

『…』

「めちゃくちゃ嬉しいよ」


『…』

何か言いたいのに言葉が出てこない
何か言わなきゃと思うけど思いつかない


目の前のワゴンのドアが開いた


その瞬間、悲鳴のような歓声が響く
あなたの持っている携帯からも
少し遅れてその歓声が響く


メンバーたちが2台のワゴンから出てくる
歓声はさらに大きくなる


一瞬で分かる

帽子を深くかぶったジョングクが出てきた


そして、一瞬こちらを見て微笑んだ気がした





でもすぐさまに人に囲まれて、スタッフや警備員に遮られて見えなくなる


『…』

すぐに目線は外され足早に空港内に入っていき、ぞろぞろと人が付いていく

一瞬の出来事すぎて足が動かなかった



毎日のように連絡を取って、一晩一緒にいた彼は
この一瞬で、ものすごく遠い存在に思えた


ただあんなに人にもみくちゃになっているメンバーたちが心配だ

あまりの衝撃な映像に思わず体が動かなかった


「あーめちゃくちゃカッコよかったね」

「一瞬でも見えるなんて最高!」


そばにいた出待ちをしていたファンの子たちが嬉しそうに話している




「あなた大丈夫?」

少し放心状態になっていたがスマホは耳に当てたままだった
スマホからジョングクの声がする


『ジョングク…』

「人が思ったより多かったけど大丈夫だった?」


あんな状態でなんで私に心配するの…?



『…それはこっちの台詞だよ。あんな人ごみで…。怪我してない?』

あなたの声を絞り出すように話す


「大丈夫ですよ。みんなに守られてるし、今は専用ラウンジに入ったから心配ないよ」

電話の向こうでジョングクが笑う


『ジョングク…』

「一瞬でもあなたと目が合えてよかった…」



一瞬…
ファンの子たちはきっと何時間も空港で出待ちをして
一瞬彼らの姿を見ただけで幸せを感じてる

そんな彼が私と一瞬目が合ったと喜んでくれてる

こんなことあっていいのか
そんなこと言ってくれて嬉しいのに動揺してしまう



『ジョングク…今ね、目の前にいたファンの女の子たちがジョングクを一瞬見て幸せだって言ってた…。そんなジョングクが私と目が合ってよかったなんて…』

「… あなた?」


期待してしまうよ…


『正直遠い存在って自覚させられちゃったけど…。私も嬉しかった。一目会えて』




「あなた…」


『やっぱり目合ったよね…私もそれだけで嬉しいよ』


「…なんだかあなたの言葉じゃないみたい…今俺少し戸惑ってるよ」


何を言っても冗談で跳ね飛ばしていたあなたが
こんな可愛いことを言ってくれてる


『ジョングクといたら、私も素直になろうって思えたの…』

見なくてもわかる
きっとあなたは今、顔を真っ赤にしてるはず

こんな可愛いことを俺のために言ってくれてる



『私も会いたい…です…。ジョングク』



その言葉を聞いて俺の足は動いていた



「ジョングキ!どこ行くんだよ!」

「もう飛行機が出るぞ!」


俺の近くで話す内容を聞いていたヒョンたちが俺を止める



「ヤー!ヒョン〜!行かせてくれぇ!」

「ダメだ!ジョングキ!耐えるんだ!」

「アンデー!」




電話の向こう側でジョングクが暴れてるのがわかってあなたは吹き出した



あー
やっぱジョングクだ
私の知ってる可愛いジョングクだ


『ジョングガー!』

あなたは笑いながら彼の名前を呼ぶ



「お、ジョングガって言った?」

親しい読み方にジョングクは動きを止める



『いつかまた会いに来てね。じゃないと私が会いに行っちゃうから』



「~~///!!あなた、今の言葉…」

あなたの言葉にジョングクは嬉しさで言葉が詰まる




『〜///!じゃあ気をつけて帰ってね!じゃ!///』

あなたは自分で言っといて恥ずかしくなって勢いで電話を切る



「あなた!え?切った!?」


ジョングクは切られたスマホを見る




はぁやっぱり
俺はあなたが好きだ














〜〜〜〜 続 〜〜〜〜

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