第18話

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2020/03/23 17:00
私は走った。

炭治朗や伊之助や善逸、そして、炎柱様の元へ。

列車から避難してくる人たちとすれ違う。

倒れてる人も、いる。

だけど、みんな生きてる。

みんな、守ってる。

すごい、

鬼殺隊ってすごい。


見えた、炎柱様だ。

炭治朗もいる。

鬼が、恐らく桃が言っていた上弦の弐、

そいつが血鬼術を使う。

炎柱様が、それに対抗してる。

あなた「はあっ!?」

思わず叫んでしまう。

炎柱様、ものすごいお怪我をなさってる。


速い、速い、速い、速い

伊之助と炭治朗も、立ち尽くしてる。

私だって、入れない。

でも、

あなた「護るのよ、」

列車から放り出されたときに血刀折れた。

だから、また、もう一本作る。

『血鬼術 一縷光』

見える。

あなた「今っ!」

私は飛び出す。

目が痛い。

この血鬼術はやっぱり体への負担が大きいみたい。

隙のない戦いの、隙を見つける。

まるで、小さな光が

大きな闇を裂くように。

私は走る。

僅かな光を、希望に向かって飛び込む。

『闇の呼吸 漆の型 闇斬光』



砂ぼこりの中に巻き込まれる。

斬った、絶対斬った。

でも、なんか、お腹が変?



砂ぼこりが晴れる。

私の目の前には、鬼がいる。

左の肩から右の腹が切れてる。

で、そいつの腕が私のお腹に食い込んでる。

後ろを恐る恐る振り替える。

炎柱様が、煉獄様が、いる。

一応炎柱様のお腹に目をやる。

ギリギリ、食い込んでない。

よかった、

炎柱「何をしている!東堂少女!」

鬼「女に興味はないんだがな」

あなた『血鬼術 鉄血』

私はぼそりと呟く。

体が強張る。

初めて使う血鬼術。

今作ったんだと思う。

身体中に流れる血が、鉄のように固くなる。

あなた「逃がしません」

あなた「斬って!頚!」

私は逃がしてなるものか、と腕を掴む。

鬼「人間だろ?弱いくせに、なぜ死なない」

あなた「はやぐぅぅぅ!」

痛くはない。

血もでない。

でも、気持ち悪いから、早く。

煉獄さんや炭治朗が、斬りにかかってくれる。

煉獄さんの日輪刀が頚に食い込んだ!

でも、

鬼「ちっ、取れない。」

あなた「うぐっ、」

もうすぐ日が出る。

私を腕にはめたまま、ガンガン逃げる。

頚には煉獄さんの日輪刀を刺したまま。

鬼「ちっ、仕方ない」

次は私か?

でも、腕は抜けないぞ?

あっ、腕を斬るわこいつ。

私はすかさず、手を頚にかける。

日輪刀は、、ダメだ、

私の方から斬り込まれてる。

こっちに引くんじゃなくて押さなきゃいけない。

無理だ、諦めよう。

あなた「離して、なるものか」

より一層頚にしがみつく。
 
絶対、逃がさない。

鬼「女に興味はない」

シュッ、

あなた「あぁっ、」

鬼の腕、斬られた、

私の手、斬られた。

ちょっと深い切り傷だけど。

手を、離してしまった。

地面にお尻から落ちた。

腕が刺さったまま。

痛い、

いや、痛くないわ、

あなた「まだ、走れる」

私はおいかける。

丸腰だけど。

鬼はすぐに煉獄さんの日輪刀を抜いて捨てた。

で、私がそれを拾って追う。

あなた「もうすぐ、日の出」

いかん、私も逃げたい、でも、

命をかけて、あの鬼狩ってやる。


あなた「待てぇ!鬼!」

あなた「逃げるなぁぁぁぁぁ!」

鬼「(なんで生きてるんだ?)しつこい女だ…」



あなた「あぁ、はぁ、はぁぁ、」

日の当たらない、深い森まで追いかけてきた。

鬼「お前、人間じゃないな」

あなた「…えぇ、そうね。」

腕が刺さって穴の空いた着物がみっともない。

傷は完全に修復したけどね。

鬼「なぜ人間の味方なんかしている。
  そんなことをしていたら、いつあのお方
  に消されるか、」

あなた「あのお方?」

私は首をかしげる。

あなた「ああ、鬼の元締めのこと?」

私はふと思い出す。

鬼殺隊が倒すべき、鬼の元締め 鬼無辻無惨…

あなた「無惨ってやつね?」

鬼「!?」

あなた「鬼は名前を言ったら死ぬんだっけ?
     まあ、私には関係ないけど」

私は煉獄さんの日輪刀を握り直す。

あなた「(私の大切な人達を傷つけやがって)
     …死ね」

『闇の呼吸 肆の型 一魂闇撃』

鬼の頚に振り下ろす、が

あなた「うぅっ、」

斬れない、

食い込まない。

鬼「弱いな」

あなた「あぁっ」

弾き飛ばされる。

鬼「これは返す。じゃあな。
  あと、ここももうじき日が射すぞ、
  鬼女。」

煉獄さんの日輪刀を投げ捨てていった。

その上弦の弐は消えてしまった。

私は煉獄さんの日輪刀を拾い、

なんとか木の影に隠れる。

あなた「ごめんなさい、斬れなくて…
     ごめんなさい、弱くて…」

私はそこで静かに目を閉じる。

鬼なので、別に寝なくてもいい。

寝なくても、平気だ。

でも、今は、どういうわけか、体が動かせない。

私は、ただただ目を閉じて、

夜が来るのを一人待った。

煉獄さんの日輪刀を握ったまま。


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