第44話

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2020/04/06 04:00
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その夜、
      
その屋敷には2人の鬼と、

1人の不思議な人間しかいなかった。

その鬼の1人は縁側で月を見上げていた。

その鬼は、おもむろに懐に手を入れて、1枚の紙を取り出した。

その紙を静かに開き、

静かにその紙に書かれている本文に目を通した。

長い間、辺りは静かだった。

「はは、ハハハハハハハハハ」

鬼は、突如壊れたように笑い出した。

しかし、その目には絶望の色と涙がにじんでいた。

鬼は、そのまましばらく泣きながら笑っていた。

しかし、

「なら…その通りにしてやろうじゃない…」

そう一言呟いた。

その目には、涙は残っていなかった。

ただ、強い、確かな意思だけが光っていた。

紙をまた懐に、乱雑にしまってしまった。

そして、踵を返して屋敷の中に消えていった。

鬼は、とある扉を開ける。

「さあ、出番ですよ______あなた」

その部屋の、小さな窓から空を見ていた鬼、

あなたは静かにこちらを見つめるが、

一言も発しはしなかった。

しかし、それに答えるように、その部屋の蝋燭の火が揺れた。

「Yes」 と。




ダレモ知ラナイ鬼ノ話
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あなた「ひゃー…疲れた疲れた」

私は今、大仕事を終えたばかりである。

まず、雪乃と晴彦を蝶屋敷に預けてきた。

もう、いつ無惨が出ても可笑しくないから。

いや…恐らく今夜であろう。

勘でしか、ないのだが。

だから、いつでも戦いに出られるように。

しかし、2人とも何かを察しているのか

あまり行きたがらなかった。

しかし、雪乃にはカナエ様に雪乃にあげても良いか

確認して、許可が出たため

私が昔、蝶屋敷にいたときに頂いた

蝶屋敷の女の子達とお揃いの赤い蝶の髪飾りを

着けてあげると喜んで行ってくれた。

晴彦はちょこれーとというお菓子で釣った。

そのあとは

重たい モノ を抱えて何里も走った。

ある屋敷から私の屋敷まで。

ようやく獪岳とその育手が帰ってくれたので、

その1番奥の部屋に置いておく。

育手のお爺さんと獪岳の会話がうるさすぎて

1度だけキレてしまった。

それが原因かはわからないが、

その次の日にようやく帰ってくれたのだった。

あなた「それでは、私は参ります。
     恐らくそろそろなので。」

空「わかりました。いってらっしゃいませ」

あなた「________のこと頼みます。
     桃太郎を飛ばしたのですぐにあの方達が来ると
     思いますが。」

空「それは、とても頼もしいですね。」

あなた「ええ、信頼できる方ですからね。
     では、行ってきます」

空「行ってらっしゃい 光明寺様…」


私は空に見送られて家を出る。

否、あれは空ではないのかもしれない。

しかし、今はそんなこと関係ないのだ。

もうすぐ応援も来るし。

私は、私の責務を全うするのみ。

私は走り出した。

私の着物の帯には、お守り代わりにキラキラと

輝く桜の帯留め。

大丈夫…きっと守ってみせるから。

私は走り出した。

お館様の、お屋敷に向かって。













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ここは、立派なお屋敷だ。

とても巧妙に隠されている。

本来なら、私も来れないだろうに…

私はその巧妙に隠されている屋敷の

屋根の上から下を見下ろす。

横にいる見慣れぬ鴉も同様だ。

屋敷の中には、病気なのか寝ている男が1人、

それに寄り添うように女が1人、

庭にはその2人の娘と思われる女の子が2人、

鞠で遊んでいる。

平和な光景である。

近くには鬼の気配。悪い鬼ではないだろう。

そして、屋敷の側に隊士の気配もある。

恐らく、柱だろう。

離れたところには、まだいくつか柱であろう隊士の気配もある。

きっと、何かあればすぐ来るだろう…。

その時だった。

??「来たか」

庭に、嫌な雰囲気の男が入ってきた。

私は、その男を…よく、知っている。

あいつは、私の、私の…

その男は、鬼である。

その鬼とこの屋敷の主である男が何やら話し出した。

私には、殆ど聞こえまいが。

私は、その内容をすべて知っている。

鬼は、鬼舞辻無惨が死ねば、みんな滅びる。

無惨はお館様の、産屋敷家の一族の一人だったんだろう。

私は、ちゃんと知っている。

だって____________

もう話が終わる。

私は横に止まっている鴉にお願いした。

隊士を集めてくれ、と。

鴉は静かに飛んでいった。

無惨「話は終わりだな?」

お館様「ああ…こんなに話を聞いてくれるとは
    思わなかったな…

    ありがとう、無惨」


「待ちなさい、無惨」

無惨「…何だ?」

私は屋根の上から声をかける。

「貴方の敵は、お館様ではありません。

   この私です」

私は屋根の上から飛び降りる。

お館様「…あなたかい?」

あまね「あなたさん、貴女何をっ…」

お館様もあまね様も驚いている。

無理もなかろう。

あなた?「貴女は、今夜、ここで私と死ぬのです」

ニコッ

あなた「許さない」


次の瞬間、

お館様のお屋敷は、

あなた?と、鬼舞辻無惨、

お館様、あまね様、

そして2人のご息女様を巻き込んで

火に包まれた。

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