第36話

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2020/04/01 03:43
あなた「およびでしょうか鉄地河原様」

私は今、鉄珍様に呼ばれて、あのお屋敷に来ている。

鉄珍「刀でけたぞよ」

鉄珍様が2本、私の日輪刀を渡してくださる。

あなた「あっ、ありがとうございます!」

私は深く頭を下げてからそっと受け取った。

鉄珍「見てみなはれ」

あなた「はい!」

私はすっと刀を取り出す、のだが、

あなた「あっ、あれ…?」

色が、変わらないのだ。

鉄珍「?」

鉄珍様も微妙な顔してる。

あなた「きょ、今日、調子悪…?」


誰にも色が変わらない理由がわからない。

打ってもらった刀は完璧。

師範の刀はまだ色が入っておらず、

新品だったので研ぎ直して、悪鬼滅殺の文字を

消してもらったもの。

元々私が持っていた刀は雪で作られたように

真っ白な刀だったのに。

なんで…?

…ある日突然色が、変わったな、そういえば。

また何かきっかけがあれば色も変わるかもしれない。

ええい、悩んでいたって仕方ない!

帰ろう。

私は鉄珍様に、里のみんなにお礼を告げた。



あなた「桃太郎!ウズラ!栗!イガ!小豆!
     帰るわよ!」

小鉄「あなたさん!」

あなた「あら、小鉄くん…
     うちのがごめんなさい」

小鉄くんはうちの5匹の梟があっちこっちに止まっている。

小鉄「いえ、大丈夫ですから」

優しいね。この子は。

あなた「ほら、みんなおいで」

私の言葉に桃太郎、ウズラ、イガ、小豆は飛んでくる。

栗だけは小鉄くんの肩を離れない。

あなた「どうしたの?おいで?」

呼んでみるのだが嫌嫌と首を振るのだ。

あなた「困ったなぁ…」

小鉄「あの」

あなた「うん?」

小鉄「この子、もらってもいいですか?」

小鉄くんはいとおしそうに栗を撫でる。

栗もそれに答えるように手にじゃれている。
  
あなた「私は構わないわよ、いいの?桃太郎?」

桃太郎「モウ巣立チノ時期ダ。構ワン。」

あなた「だって。どうぞ」

私は小鉄くんの問いに答える。

小鉄「ありがとうございます!」

あなた「何か困ったことがあれば栗に文をつけて飛ばしてね。
     私のところにはこれるように教えてあるから。」

小鉄「はい!」

あなた「じゃあね」

小鉄「あっ、そうだ。これどうぞ。」

小鉄くんが小さな包みをくれる。

小鉄「お餅です。帰り道にでもどうぞ」

あなた「ありがとう、じゃあね」

私はもらったお餅を懐にしまう。

隠「お待たせしました、東堂様。」

あなた「よろしくお願いします。
     またね、小鉄くん。」

私は目隠しと耳栓をしてもらい隠の背中に静かに乗った。

桃太郎達はどこかへ飛んでいってしまった。

ちょっと寂しい。



隠「つきましたよ」 

あなた「あっ、ありがとうございます」

隠の背中でウトウトしている間に家についた。

隠「いえいえ、それでは失礼します」

隠がさっといなくなる。

蝶屋敷にあの子達迎えにいかないと。

そう思いながら玄関の戸に手をかけると、

桃太郎「あなた!」

あなた「桃太郎、どうしたの?」

随分と疲れた感じの桃がいた。

何かあったの?

桃太郎「炭治郎ガ!上弦ガ!」

あなた「案内して、桃。」


走る。走る。走る。

とにかく走る。

桃に教えられた 花街 とやらに。

だが、とにかく遠い。

空を飛べたら早いだろうに。

人間の足じゃ、間に合わない…

あなた「ぐっ、」

桃太郎「モット速ク!」

あなた「わかってるわよ!」

私は立ち止まり、体に力を込める。

熱い血が、私の中を駆け巡る。

あなた「はっ、うまくいった…」

私は自分の意思で、鬼から人へも、

人から鬼へもできるようになったみたいだ。

でも、今は喜んでいる時間はない。

私は桃太郎を腕に抱き締める。

あなた「首、もげないようにね


      今行くよ、炭治郎…」

今の私はきっと無限列車よりも早いだろう。

片手で桃を、もう片方の手で着物の裾を捲りあげ

私は走った。








あなた「ここが、花街…?」

桃太郎「…遅カッタカ…」

私は腕からすっと力が抜け、桃が逃げる。

力が抜けたからか、鬼の体から人の体に戻ってしまった。

花街ってとても綺麗な場所なんじゃ…?

建物はボロボロ。

血の匂いと泣き声に包まれていた。

でも、鬼の、強い鬼の気配、日輪刀の圧は感じる。

あなた「…炭治郎、善逸、伊之助…宇髄さん…?」

柱の、宇髄さんの気配…

みんな、ちゃんと生きてるよね…?

あなた「…行くか」

私は恐る恐る花街の中へ入る。



まきを「あなたちゃん?あなたちゃん!?」

あなた「まきをさん!?」

そこには怪我人を必死に逃がすまきをさんがいた。

やはり宇髄さんもいるらしい。

あなた「鬼は?」

まきを「あっちに、天元様もっ!」

あなた「わかりました。ありがとうございます。
     桃太郎はここにいて。」

私は、鬼の気配のする方に走った。


進めば進むほど、街はボロボロになる。

あなた「あがっ、善逸くん!?」

善逸「う、あなたちゃぁん…」

私は、瓦礫の下敷きになっている善逸を見つけた。

意識はまあまあしっかりしているようだ、

足潰れてるけど…。

あなた「おらぁぁぁあ!」

私は、善逸の上の瓦礫をどかす。

私は、以外と怪力なのである。

あなた「大丈夫か?生きてるか?」

一応声をかけると

善逸「うぅ…」

とだけ帰ってきた。

足以外に特に目立つ損傷はなさそうだ。

『血鬼術 回蝶』

これで止血だけは出来るだろう。

ふと、上を見上げると、女の鬼がいた。

彼奴が元凶か?

私は、研いで貰ったばかりの日輪刀を構え、

屋根の上に飛び乗った。

堕姫「誰よあんた。不細工ね」

あなた「久しぶりね堕姫……いや、梅、かな?」

えっ、

堕姫「なんで私の名前知ってんの?」

あなた「相変わらず一人じゃ何もできたいんだな、
     妓夫太郎だっけ?彼奴がいないとあんたはダメね。」

違う、さっきの言葉は私のじゃない。

私はこいつの名前なんか知らない。

勝手に煽るのやめてよ、私の口よ…。

堕姫「生意気ね」

堕姫の帯が、攻撃してくる。

私は、それを軽く避けてしまう。

なんとか反撃したい。

私は、攻撃を避けながら、体に力を込め、鬼の姿になる。

堕姫「お前っ、鬼なの!?
   ていうか、その目…あんたまさかっ、」

あなた「目っ?」

そこに突然善逸と伊之助が飛び込んで来た。

下では炭治郎と宇髄さんが妓夫太郎と対峙している。

なんで私は、こいつらの名前を…?

よくわからない。考えてもわからない。

もう善逸が彼奴、堕姫の頚を切る。

私も手伝わなきゃ。

こいつらは頚を同時に切らないといけない。

堕姫の頚はそうとう勢いよく斬るか

複数の方向から切らないといけない。

…なんで知ってるんだろう。

いや、どうでもいい、やれ。

私も善逸と伊之助に参戦して刀2本

逆方向から切りかかる。

鬼の帯みたいな頚を切る。

善逸・炭治郎・あなた「アアアアアア!!」

伊之助「ガアア"ア"ア"ア"」

とんだ、頚が飛んだ!

炭治郎と宇髄さんが相手している鬼の頚と同時に。

お、終わった?

あなた「違う、ダメッ…」

違う、まだ終わってない。

来る、風が。来る、突風が。

森を荒らしてしまうほどの、突風が。

あなた「に、逃げてぇぇぇぇ!」

私は、横にいた善逸と伊之助を咄嗟に小脇に抱えて走る。

善逸も伊之助もガーガー言っているが、問答無用。

あなた「いーーやーーーー!」

私は、男の子2人抱えて飛び上がる。

やっぱりうまく飛べない。体が重たい。

あなた・善逸「ギァア"ア"ア"ア"アアアアー」

後ろから物凄い突風。

なんとかその風に乗って1回転。

無事に地面に降りれた。

善逸「いやーーーーどういうごっ、」

善逸がギャーギャーうるさい。

いや、急に黙りこんだぞ。

あれ、伊之助は…?   2人とも失神してる。

とりあえず、安全そうなところに2人を寝かせる。

伊之助からはほんのりと毒の匂い。

あと、出血がひどい。

善逸の方からは特に毒の匂いはしない…。

『血鬼術 回蝶』

とにかく止血はしなきゃ。

でも、止血はできても解毒はできない。

このままじゃ…。

私は、2人を抱え直し、置いてきてしまった

炭治郎君、禰豆子ちゃん、宇髄さんのところへ戻る。



あなた「ね、禰豆子ちゃん!炭治郎!」

なんとか2人とも生きているようだ、よかった。

__禰豆子ちゃんなら2人を助けてくれる。

そんな気がした。

禰豆子「ムーー!」

あなた「助けて…この2人も、このままじゃ…」

善逸「嫌ーーおろじでぇーーー俺死んじゃうってぇー
    足があぁぁぁぁ!」

あなた「騒ぐな、傷に触るぞ。」

また、私の声じゃない…

全員(ビクッ)

誤解されてね?

私は、また、急に腕から力が抜けそうになり、

慌てて二人を降ろした。

あなた「伊之助の呼吸が、弱い…」

禰豆子ちゃんが伊之助に触れる。

伊之助が一瞬で燃え上がる。特に驚かなかった

あなた「すごい…」

体の、ただれた皮膚が元に戻る。

毒の匂いが、しなくなった。

伊之助「腹減った なんか食わせろ。」

炭治郎と禰豆子ちゃん、善逸も伊之助に抱きついて泣き出す。

私もつられてポロポロと…じゃないよ、

あなた「炭治郎くん、禰豆子ちゃん、うずいさ…
      音柱様のところへ行かなきゃ…
     あの人も毒の匂いが、」

炭治郎「そうだ、宇髄さんのところに…」

あなた「善逸くんと伊之助くんは私に任せて
     早く、早くしないと音柱様も…」

禰豆子ちゃんと炭治郎くんが行ってしまった。

私は、とりあえずまた人間に戻った。

そして残された二人の止血をしたり、

(元蝶屋敷勤めなので慣れてる)

血を拭ってあげた。

そういえば、貰ったお餅あったな、

あなた「食べる…?」

伊之助に餅を差し出してみると、ぱくっと食べられた。

善逸「あなたちゃん…俺、頑張ったよ…
    うう、足が痛いよぉ…」

あなた「よく頑張ったね、我妻くん」

痛い痛いと喚くので足をさすってあげる。

優しくね、優しく。

伊之助は完全に放心。

食欲はあるらしいし、大丈夫だとは思うけど。

善逸「ねえ、あなたちゃん」

あなた「何?」

比較的しっかりしている善逸に話しかけられる。

善逸「あなたちゃんって恋人いるの?」

あなた「いないけど…どうして?」

善逸「いや…」

あなた「気になるよ、教えてよ。」

善逸「…いや、あなたちゃん、まさか、
   身籠ってるのかなって…」

あなた「はあ?」

身籠ってるって、何よ、

私が妊娠してるっているの?

善逸「ご、ごめん…」

あなた「なんでそう思ったの?」

善逸「…あなたちゃん、心臓の音、二つするから。」

あなた「えっ?」

善逸「さっき抱えられて初めて聞こえたけど…
   絶対心臓が二つあるって…」

あなた「…それはないわよ
     私は、身籠ってないわよ。
     聞き間違いじゃない?」

善逸「うん…今はしないし、そうかも
   ごめんね」

あなた「私こそ、なんかごめんね…」

きっと彼は疲れているんだろうね。


そのあとすぐに炭治郎と禰豆子ちゃんが戻ってきた。

宇髄さんは一応生きてはいるらしい。

炭治郎と善逸、伊之助と禰豆子ちゃんが抱き合ってる。

そりゃ、上弦の鬼を倒したんだもん。

喜びたくもなるわ。

私は、そんな四人を微笑ましく見つめていたのだが、

禰豆子「ムー!」

あなた「おおっ、」

禰豆子ちゃんに引っ張られてその輪の中に引き込まれる。

あなた「ふふっ、おめでとう、4人と…も…?」

3人は抱き合うようにして失神していた。

きっと直ぐ隠が来るわよね。

私は、そっと逃げ出そうとした、のだが、

運悪く

後藤「何だお前」

志崎「あなたちゃん!いたの?」

あなた「うげ、しざちゃん、ごとーさん…」

この人、私が蝶屋敷にいたときから知ってる

隠の女の人、志崎さん。

あと、みんなお馴染み後藤さんね。

あなた「こ、こんにちわ…」

志崎「元気なら貴女も手伝ってよ。」

後藤「そうしてくれ」

あなた「…はい…」

私は、逃げることを諦め、

仕方なく炭治郎を背負い、

禰豆子ちゃんの箱を前に抱え、

蝶屋敷までご一緒しましたとさ。





私がこの戦いに参戦したことは、炭治郎達と私だけの秘密です。

後藤さんと志崎さんにはたまたま通りかかったことにしました。

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