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第1話

出会いは突然で。
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2018/03/04 12:34

俺のクラスには、1つの空席がある。
窓側の一番後ろ。春には、校庭の桜を見ることが出来たり、授業中寝てもバレにくい“特等席”だ。

そして、俺の隣の席である。


俺らが卒業するまであと1ヶ月弱。結局、この特等席に座る奴はいなかった。一時期、転校生が来るのでは?などと噂がたったが、卒業まで1ヶ月弱ともなれば、そんな噂は消えていた。

こうして、俺の平穏な高校生活は終わりを告げる。…はずだった。

担任
「卒業まで1ヶ月、というこのタイミングですが、今日からこのクラスに“転校生”が加わります。」
(…は?)

聞き間違いではなければ、今、“転校生”と担任は告げた。
衝撃な発言に、混乱しているのは俺だけではない。
クラスメイト
「先生ー!男ですか、女ですか!?
…やっべー、俺このセリフ1回言ってみたかったw」
クラスのお調子者が転校生がきた時の決まり文句を言っている。…いや、小学生かよ。
担任
女子よ。加治さん、入ってくれる?
佐々木 大河
なぁなぁ翔、この展開、少女漫画みてーじゃね?
空席ではない方の隣の席ある幼馴染の大河が話しかける。
彩瀬 翔
俺、少女漫画読んだことねーし。
佐々木 大河
俺も。
彩瀬 翔
おいおい…。
でも、大河の言う通りかもしれない。
妹が前に見ていた少女漫画が原作のドラマでは、ここで引っ越した主人公が学年1イケメンと呼ばれる奴と恋に落ちる、みたいな展開だったはずだ。ただ、“卒業まであと1ヶ月弱”という条件を除けば、という話だ。

(こんな時期に転校なんて、珍しいにも程がありすぎるだろ。)

クラス全員の視線は、転校生が入ってくるであろう、前の扉に集中していた。


ガラッ、といつも通りの音を立て、扉が開く。


入ってきたのは、パステルカラーのリュックを背負い、長い茶色がかった黒髪をポニーテールにした、少し小柄の少女だった。
加治 結
残り1ヶ月の間、みんなと同じクラスで過ごす、加治 結です!本当に短い間だけど、仲良くしてね!
こうして、俺の平穏だったはずの高校生活はこの転校生・加治 結によって波乱の青春へと変わった。

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