第4話

将来
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2018/03/04 12:48
(将来についてか__。)


悩みながら、俺の足は自然とあの場所へ向かっていた。



俺の父が外科部長を務める、大学病院だ。




(俺が、医学部に進むことを決めたのも父さんが医者だったから__。)


小さい頃から、父に弁当を届ける母さんについて、この大学病院にきていた。

そして、いつしか、医者である父を尊敬していた。



外科がある6階に向かう。


中井さん
あら、翔くんじゃない!
彩瀬 翔
中井さん!
お久しぶりです。
中井さん
久しぶりね。大きくなって…。
そうそう、大学合格、おめでとう。
春からは医学部に通うんでしょう。
中井さんは、この病院にくるといつも遊んでくれていた顔馴染みの看護師さんだ。
彩瀬 翔
はい。
中井さん
お父さんと同じ道に進むのね。
翔くん、小さい頃から「お父さんと同じ医者になって、たくさんの患者さんを救うんだ!!」ってずっと言ってたもんね。
彩瀬 翔
ははっ。懐かしいです。
中井さん
きっと、翔くんなら良いお医者さんになれるわ。…あ、私は少し用事があるからこれで。
また、顔見せに来てね!
彩瀬 翔
お忙しいところ、すみませんでした…。
中井さん
そんなのいいのよ。
じゃあ、またね!
小走りで行く中井さんにお辞儀をする。



(父さんの同じ医者になって、たくさんの患者さんを救う、か。)


もちろん、その夢を忘れたわけでも捨てた訳でもない。でも、どこかその夢に少し違和感を感じているのは確かだ。

周りを見渡すと、看護師さんや医者、患者さんが思い思いに行動している。

きっと、父さんも今頃、患者さんを救うために奮闘しているのだろう。





(帰るか_______。)

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