第6話

2回目の偶然
66
2018/03/05 12:58

(病院、行くか。)


流石に提出期限まであと三日だと言うのに空白はまずい。

何か答えに近づけるかもしれない、なんて思い、俺は父さんの働く病院に向かった。


(今日は…。)



何となく、中井さんに相談に乗ってもらいたかった。

しかし、その中井さんは今日は見当たらない。





(帰るか_____。)




その時、誰かが俺の肩をトンっと叩く。

振り返ると、
加治 結
彩瀬くん!
彩瀬 翔
…加治!
加治 結
こんなとこで会うなんて偶然だね。
って、前もこんなことあったなぁ。
彩瀬 翔
なんでお前、こんなところに…?
加治 結
彩瀬くんこそ、どうしてここに?
彩瀬 翔
俺の…父さんがここで医者やってんだよ。
それで、作文のなんかヒントになるかと思って。
加治 結
そっか~!
彩瀬くんのお父さん、ここのお医者さんなんだ。
彩瀬 翔
お前は…誰かのお見舞いか?
加治 結
う、うん!
一瞬、俺の言葉に躊躇いを感じていた気がするが、


(勘違いか。)

加治 結
でも、もう終わったの!
あ、そうだ!少し、暇ある?
彩瀬 翔
あ、あぁ。
加治 結
それなら、屋上に行かない?
今日は、風が気持ちいいの!
加治に誘われて、特に断る理由もなく俺と加治は屋上に上がった。
加治 結
到着!ね、どう?気持ちいいでしょ。
彼女の言っていたことは確かだった。
今日は、いつもより風が心地よい気がする。
彩瀬 翔
そうだな。
加治 結
こうやって風に当たってるとさ、悩みも吹っ飛ぶ気がしない?
彩瀬 翔
…え?
加治 結
いつも、自分からあんまり風を感じたいって思うことないじゃん。
でも、こうやって悩んでる時とか悲しい時とかに風に当たると、そんな気分が晴れていく気がするの。
そう言って微笑んだ彼女の笑みは眩しくて、少し悲しく感じる。
加治 結
だから、私はたまに風に当たりにくるの。
彩瀬 翔
…そうだな。
加治 結
…!今、彩瀬くん笑った!
彩瀬 翔
え?
(今、俺、笑ったのか…?)
加治 結
彩瀬くんが笑っところ、初めて見れた…!
(なんでお前が嬉しそうなんだよ。)
彩瀬 翔
俺だって、たまには笑うよ。
加治 結
でも、私が来てから心の底から笑ったことなかったから。その…、なんか嬉しい!
彩瀬 翔
…変なやつ。
(人が心の底から笑うのを見て、嬉しくなる奴っていうの、いるんだな。



…笑顔______!)






彩瀬 翔
加治、ありがと。
加治 結
えっ?
彩瀬 翔
俺、少し用事思い出したから帰る。…じゃあな、また明日。
加治 結
え、あ、うん!
また明日!
笑顔。


そうだ、笑顔だ。



俺の目指していたもの。将来の夢______!

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