第100話

なんでもない日
559
2022/04/18 08:41
「あなたちゃーん」

『ん?』



とある日。

しばらくの休みを2人で充実していた私達。



「デート行かない?」

『デート?』

「うん。久々に」

『ちょっと買い物行きたかったんだよねぇ』

「じゃ、それも行こ」

『うんっ』




準備をして、買いたい物を考えて

2人で手を繋いで外に出た。




「にしてもさ」

『ん?』

「ホントに車売っちゃって良かったの?」




この間の件の後、私は本当に車を売った。

超ハイスピードで買ったあの車。

スープラ好きだったんだけどね。




『うん。いいの』

「車運転するの好きなのに?」

『車乗って2人でどこか呑みに行ったりすると、私が呑めないでしょ?2人でスタジオ行く時も歩きだと2人の時間も取れるし』

「そうだけど…」

『流石にハーレーは捨てれなかったけどね』

「あなたちゃんのバイブルか」

『夢だったからね。ハーレーに乗るの。小さい頃パパに乗せてもらった時すっごく嬉しかったの覚えてる』

「だから自分で?」

『うん。』

「すごいなぁ」

『これからは2人でいろんなところ行こう』

「うん。あと旅行行きたいなぁ」

『蟹食べたいっ』

「蟹つったら福井か」

『早く世界安泰しないかなぁ』

「気長に待とうよ」

『うん。』









なーんて話をした翌日。

街中でばったりとある2人と出会した。

うん、なんかめんどくさいことになるから会いたくなかったけど。




「あー白夜だ」

「みーっけ」

『どちら様ですか?』

「ひど。」

『もー…なんなんだよぉ…』

「ちょっと会いたくてね」

『は?なに、思わせぶりの彼氏?』

「結婚してる身が何言ってんだ」

「まぁまぁ。お前まだ昼飯食べてないでしょ?」

『食べてないけど…?』

「奢る」

『は?』

「何食べたい?」

『いやいやいや、えなんで?』

「そういう気分」

『なに、蛙でも降るの?』

「な訳あるか」

「ゴキブリよりも蛙の方が恐ろしいと思ってるお前が、蛙なんか降ったら死ぬだろ」

『うん』

「まぁちょっと着いて来なって」

『えー…』




何がしたいんだコイツらは…

なにか企んでるのか!




「で、何食べたい?」

『うーん…肉?』

「昼から肉かよ」

「昔ならやってたけどな」

「あれだろ。朝から呑んでぶっ倒れて、3人で奇行に走ってコケて大笑い」

「あったなぁそんなこと笑」

『若いからできたんだよ』

「まぁそれもあるか」

『……でも、久々にやりたいかも』

「「…?」」

『昼から呑んで、酔っ払いたい』

「…やるか」

「白夜が酔うまで呑むのかぁ。死ぬな」

『手加減するって。なんならビール早呑み対決する?』

「やる」

「出たぁ笑」

「よし!行くぞ!」

『あっはっは!楽しー!笑』



偶にはこういうのもいいよね。

紀章さんに連絡しなきゃ。



〈もしもし?〉

『もしもし、紀章さん』

〈どうかした?〉

『今日ね。柿原と前野に誘われて昼から呑もうって話してるの』

〈へぇ!楽しそうだね〉

『久々に酔っ払おうってことだから、大惨事になるかも…』

〈はいはい笑。何かあったら酔っ払ったままでいいから、連絡していいよ。〉

『紀章さんも来る?』

〈行けても夜からしか無理だなぁ。ま、久々の同期組で遊んでらっしゃいよ〉

『分かった!』

〈帰ってくる時は〉

『分かってるよ。紀章さんに連絡する』

〈迎えに行くね〉

『じゃね』

〈んー〉




「おっけ?」

『おっけー』

「「いぇーい!」」

「行くぞ白夜!」

『あちょ!引っ張るなって!』











「おーい、谷山君」

「あ、山路さん」

「うちの娘元気?」

「娘って笑」

「この人にとってあなたは娘みたいなものだからねぇ」

「あ、朴璐美姉さんもいたの」

「よっ」

「お疲れ様でーす」

「お疲れさん。」

「あなたちゃん元気ですよ。今日も昼から同期組で呑みに行ってるみたいです笑」

「昼から ⁉︎」

「すごいなぁ笑」

「今何時です?」

「19時半」

「まだ連絡来る時間じゃないか」

「待ちぼうけ?」

「そんなところです」

「気長に待ってあげなよ。」

「愛する人を待つって、そう嫌なことじゃないもんね」

「あら、そんなこと思ってたの?」

「そうかもね」

「人前でイチャつくって、側から見るとこんなんなんですね」

「やっと分かった?笑」

「幸せならそれでいいさ」

「そろそろ帰んなきゃ。」

「そっか。じゃあね、谷山君」

「お疲れ様でしたー」




うーん。

迎えに行くまでどうしてよっかなぁ。

なんて事を考えてたら、マモから電話が。




「もしもしー?」

〈あ、もしもし紀章さん。〉

「どしたー?」

〈助けてください〉

「は?」

〈えっと、何をどうすればいいのかわからないんでとりあえず現地来てもらっていいです?〉

「お?うん。どこ?」

〈ST☆RISHの打ち上げでよく行くあの居酒屋です〉

「了解。15分くらいで行ける」

〈お願いします。なるべく早く…〉

「おぉ…?」




なんだ?

なんかすごく騒がしかった気が…











というわけで居酒屋に来た。

着いたと連絡すると秒で来たマモ。




「紀章さん待ってましたー!」

「どしたよおい?」

「とりあえず中に入って!」

「押すなって…」




急かされて居酒屋の中に入り、奥の個室に案内された。

するとそこには




『ひッぐ…うわぁぁん…』




端っこで蹲って泣いているあなたちゃんがいた。

その前には寝ているカッキーと前野君。




「なんでこんなことに…?」

「えーっと…」

「あなたちゃん!」

『ぅえ…?』

「大丈夫…?」

『きしょーさん…?』

「そうだよ。俺だよ」

『うぅ…うわぁぁ…!』




抱き締めると俺にしがみついて泣いた。




「マモ…何があった…?」

「俺たまたまここで3人と鉢合わせになったんですよ。一緒に呑む気はなかったんですけど、既に3人とも酔ってて…」

「危ないから監視役で?」

「はい…そしたら保護してくれる人が見つかったからって3人とも思いっきり呑みだして…ビール早呑み対決とかするし…」

「よくやるよ…笑」

「んで、あなたちゃんが泣き出しちゃって。あなたちゃんが酔っ払ってギャン泣きなんて久々に見たから戸惑って、紀章さんのことずっと呼んでるんで連絡した感じです」

「なるほどな…」

「止められなかった俺も悪いんで、とりあえず前野君達は俺が送ります。けど2人が限界なんであなたちゃんのことお願いしまーす」

「りょーかい」

「よし!ほーらカッキーも前野君も!」

「いてててて!」

「誰だよぉ…」




大惨事だなオイ…

あなたちゃんの席にあるジョッキを数えると、10杯は呑んでる…

あーぁ、明日二日酔い確定だなこりゃ。




「あなたちゃん。ほら帰ろ」

『んぅ…』

「立てる?」

『んー…きしょーさん…?』

「ん?」

『きしょーさん…』

「…」




おぶってくか…?

歩いて帰れねぇ距離じゃねぇし。




「あなたちゃん。おぶるからちょっと起きて」

『んー…』

「あーあー、ベロベロじゃないのよ」




とりあえず会計終わらせて、店員さんに扉開けてもらって

あなたちゃんをおぶって店を出た。

なんか、こんなの初めてだなぁ。

こんなに酔っ払ったあなたちゃん久々に見た。

これはこれで可愛い。




『ぅん…』

「…寝たか」




首元に顔を埋めて、すやすや寝息を立て始めていた。




『…きしょーさん…』

「あれ、起きてたの?」

『…』

「あなたちゃん?」




あ、なんだ。

寝言か。

夢の中にも俺がいるの?

可愛いすぎんだろ

最近あなたちゃんが可愛くて可愛くて仕方ない。

いや、元から可愛いところもあるけど。

前はもっとこう、オトナの"女"っていう色気があった。

今ももちろん色気はある。

けど皆の前では"女"としてカッコいい姿を見せるのに、俺の前ではこんなに可愛く見える。




『…あ』

「…起きた?」

『…起きた…』

「災難だったね。」

『まだしっかり酔ってる気がする…』

「うん。大丈夫。酔ってる」

『…あったかい』

「…」

『…紀章さん』

「ん?」

『大好き』

「知ってるよ」

『紀章さんは?』

「聞く必要ある?」

『ないよ。分かってる。私の事大好きだってこと……けどさ、直接聞きたいの』

「…もうちょっとで家だから」

『…うん』




ここで言ったらキスしてしまいそうで。

してもいいけど人前っていうのもあるし。

まだ外だし。




「家着いたよ」

『ん…』




必死に理性を抑え、家を鍵を開けて

おぶったまま靴を脱いでカバンを置いて

あなたちゃんを下ろして、玄関で組み敷いた。




『え…?』

「…知ってるっつーの…」




抑えていた理性を解放し、何度も何度もキスをした。

酒のせいか舌が熱い。

そして抵抗しないと来た。




『きしょーさん…』

「ん?」

『…言って』




変なことは覚えてんだから。




「…愛してる。」

『…ふふ』




人前でカッコつけるのが俺の本能なのに

どうもあなたちゃんの前ではカッコつけられない。

いつまで経っても。

まだ15年の片想いの気が抜けてないのか。

それともこれが愛情表現なのか。




『…玄関寒い』

「大丈夫…すぐに暑くなる…」




狼に怯えるウサギみたい。

けどこうなる事を望んでるのも、あなたちゃんの本能でしょ?

しかも酔ってるから本音が出やすいし。




『…紀章さん』

「ん?」

『ずっと想い続けてくれてありがとう』

「っ…」




エスパーかよ。

俺の心は全部お見通しってやつ?

流石だなぁ。

叶わねぇや。




「…」

『…ま、待って』

「ん…?」

『紀章さん明日仕事朝からなのに…』

「…頑張って起きるよ」

『疲れたままじゃ声にも影響でちゃうよ…』

「…なら、癒して」




その気になってんのに焦らされると

かえってこっちもコーフンするようなものなんだよ。







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