第8話

プロポーズ
4,937
2018/04/25 13:33
起き上がった勢いが有り余って、まふの肩にしがみついてしまった。
そらる
ちょっ、危ないって!
奥の更に奥にまで入ってきて、少し声が漏れる。するとまふが、小さく俺の名前を呼んだ。
まふまふ
そらるさん…
そらる
なに?
まふまふ
今の言葉…信じていいんですか?
そらる
え、もちろん。まふ相手に嘘はつかないけど?
まふまふ
っ!!じゃ、じゃあ…
そらる
するとまふは、少し黙り込んだ。それも恥ずかしそうにして。

そしてやっと口を開いたかと思うと、それは俺の予想外の言葉だった。
まふまふ
今のって…''プロポーズ''ですか?
そらる
……ん?んん??
まふまふ
自分の言ってたこと、覚えてます?
そらる
…あっ!!
『ずっとそばにいるし、お前より早く死なないように頑張るからさ』
そらる
………
これだけじゃない。前々から「一緒にいる」やら「まふの前からいなくならない」やら言っていた。

…改めて思い返すと、なんて恥ずかしいことを…アホか。
まふまふ
僕からしたかったのに…
そらる
………え?
赤い顔を手で覆い自己嫌悪しているなか、横から小さく声が聞こえた。しかもはっきりと。
そらる
お前、今なんて──
まふまふ
だから、僕からしたかったんですよ
そらる
言った…………え
夢だろうか。夢なのだろうか。もう死んだのか?あの世とは夢のような場所なのか?

ためしに頬をつねってみる。そしてなぜか、まふの頬もつねった。
そらる
いはい(痛い)…
まふまふ
はひ、ぼくもいはいでふ
そらる
…………!?!?
今自分はどんな顔をしているのだろう…それを考えると、自分でもわかるくらい顔が熱くなった。
まふまふ
あの…僕と、け、結婚、とか…嫌でした?
そらる
!!
逸らしていた目線を合わせると、目の赤いまふは、さっきみたいな辛そうな顔で俺を見ていた。まっすぐな目で。

そんな顔をして…本当に可愛いやつ。
まふまふ
えっ…
対面座位だから、背中に腕を回すのは容易いことだった。
まふまふ
あ、あのっ、そらるさん!?
あぁ、温かい…。

現実の出来事に、俺の目からは涙が零れてきた。そのせいか、まふは声色からして心配してくれているのだろう。焦るように声をかけてきた。

でも俺は、落ち着いた調子で返事をした。
そらる
お前なぁ…こんなに好きにさせといて、嫌なわけないだろ
まふまふ
っ!!ほ、ほんとですかっ!?
まふは嬉しそうに俺に言った。声は震えて出ない代わりに、頭を縦に振る。

まふを安心させるために言った言葉が、まふの中ではそんなものになっていたとはね…無自覚だったよ。
そらる
そうだ、まふ
まふまふ
はい?
そらる
まふからプロポーズしてよ。する予定だったんでしょ?
まふまふ
えっ!?い、いや、そうですけど…
そらる
ほら、ちゃんとビシッとキメてよ
まふまふ
なっ、えぇ!?
俺からは無自覚で成り行きみたいだったし、まふからは''したかった''というだけで、されたわけではない。ならちゃんと、自分の未来の旦那からしっかりとプロポーズを受けたい。

まふは少し顔を赤くして恥ずかしがった後、一度深呼吸をして、口をゆっくりと開いて言った。
まふまふ
僕と、結婚してください
そらる
ふふっ…はい、もちろん

プリ小説オーディオドラマ