付き合いの長いこいつの子供っぽい姿は、初めて見たかもしれない。
実はあの後、まふは泣き疲れたのか、俺の肩で寝てしまったのだ。……恥ずかしながら、まふに解放させてもらえなかった俺も、一緒に寝てしまったという失態を犯してしまった。
本当に元気なのか、はたまたただのアホなのか…そんなことは考えても意味がないと思い、俺は部屋を出て冷蔵庫へ向かった。
初回のCDもらって見たけど、特典DVDでまふは酒に弱いことが判明した。多く飲むと何するかよくわからない。弱い時もあるし、強い時もある謎の男…。
嫌な予感を感じながらも、俺はビールを二本持ってまふの元へ向かった。
俺がフタを開けてアルコールの入ったヒールを飲もうとすると、まふがサッと自分のノンアルと取り替えた。
そしてガブガブと飲む。
結構勢いよかったから、恐らく缶の中は半分──いや、半分以下くらいにはなつているのだろうか。
でも早い気がする。
立ち上がって部屋を出ようとした、そのとき。俺の体は前にではなく、後ろへ傾いた。
流石に床に倒れると思って、反射的に目を瞑る──が、衝撃は無く、代わりに軋む音がして、体が小さく跳ねた。そして目を開けると、俺はまふに覆いかぶされていた。
俺の体をおさえるまふの手は熱く、吐息も熱かった。
まふは俺の首に顔を埋め、口を吸い付けてきた。
違うからな。これは──そう!まふの熱がうつったんだ!俺は断じて感じてなんかいない!
…なのに体は、どんどん熱を帯びていく一方だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。