部活も終わり、帰り道。俺は楪さんと、2人きりで歩いていた。
こう、頭の中で言葉にすると2人きりという言葉を何となく気恥ずかしく感じながらも、彼女の後ろ姿を見ながら歩く。
その声は、唐突なものだった。
唐突な内容に驚いた。そんなの、意識していなかったし……
あぁ、なるほどと思うと同時。なにかとてつもない申し訳なさに駆られた。
少し俺をからかうような、愉快そうに笑う彼女がまた可愛らしい。
デートの日から思っていたけれど、前も良かったが、メガネをとったことによってより瞳がよく写って。それがまた、綺麗だ。
さっきの愉快そうな顔とは打って変わって「こいつ、、、」みたいな顔をされて内心焦る。
半眼とかですらなかった、目は見開いていたのに失望が伝わってきた。
いやいやいや、全員の女子の顔とセクハラ台詞を律儀に覚えませんよ、
なんて言おうとも思ったが…今は、その。彼女である楪さんなわけだし。あまりほかの女にセクハラした話はしたくない。まぁついさっきして「うわぁ…」って言われたばっかなのだが。いやだからこそだが。
「ゴホンッ……ンンッ」と楪さんが声を整え出すものだから、いっそう焦った。
モノマネ?楪さんが?俺のセクハラのモノマネ……だ…と。
ただでさえ自分が過去にしたセクハラのセリフなんて思い出したくもないのに、それを今の彼女、そのした相手にモノマネされるというのだ。
恥ずかしいやらなんやらでどうなるかは自分でも分からない。
それはもう、見事なドヤ顔でありながら。しかもそのドヤ顔は俺の昔のクズを演じていた頃の顔を想像させる。
身振りまでつけながら、心做しか声を低くさせたようにも感じるが楪さんの地声で、「パンツ」という言葉が飛び出したことへの高揚感も重なりながらも、
自分の昔の黒歴史やその他もろもろの記憶が蘇り…………もう…なんというか…!
顔が真っ赤になる。
それが悪かったのかもしれない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。