第4話

第三章 沖縄
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2019/06/09 01:29
歩美(アユミ)
まだかな...
持ってきた小さいクマのストラップを握りしめた。
今、私は沖縄行きの飛行機に乗っている。
あの後、行くことに決めたのだ。気分転換っていうのもあるけど、おきおばあちゃんの『もしも』のためでもあった。
窓の外から見える景色は変わることなく、ただただ青い空と白い雲があるだけだった。
私の隣には、外国人らしき女の人が座っていて、列を挟んだ向こう側に座っている男の人と外国語で何か話している。乗ったときから、ほとんど喋りっぱなし。だから、眠ることもできない。
まわりを見渡すと、ほとんど大人の人たちだった。その中にはスーツを着ている人もいる。
みんな仕事なのか。そこで改めて今日が平日だということを実感した。
アナウンス
まもなく着陸体制になります。
シートベルトを閉めてください。
上の方にある、シートベルトのマークが青く光った。
私はシートベルトをして、腕時計を見た。出発してから三時間ほど経っていた。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
飛行機が無事着陸し、まわりの人たちが立ち上がるのを見てからシートベルトを外した。





長い通路を抜け、飛行機から降りる。そして、長いベルトコンベアの上を歩きやっと外に出れた。外は思ったよりも涼しくちょうどいい温度だった。
私は、どこかに車で来ているおばあちゃんを探した。確か大きな黒い車だった気がする。小さい頃の私は、そんな車を運転するおばあちゃんに憧れていた。
だけど、思ったより見つからない。
しばらく歩いて探していると、遠くの方にこちらに手を振る人が見えた。隣に黒い車がある。私はそっちに向かって走った。




歩美(アユミ)
おばあちゃん!
おばあちゃん
よく来たね、一人でこんなところまで...
おばあちゃんは、すごいね大人になったねと褒めてくれた。
歩美(アユミ)
あれ...車変えた?
車が小さい。こんな小さくはなかったはずだ。
おばあちゃん
変えてないけど...?
歩美(アユミ)
でも小さく見える
私がそう言うと、おばあちゃんは笑って
おばあちゃん
歩美の背が高くなったんじゃないの?
と言った。
それから、私たちは車に乗りおばあちゃんちに向かった。
私は助手席に乗り、久しぶりに見る沖縄の景色を楽しんだ。昔から変わらないところもあれば、全く違う姿になっている場所もあった。

しばらく乗ったあと、少し人通りが少ない道に出た。左側に海が見える。そして、海の手前に大きな病院があった。
病院の前を通りすぎる時、『美堂病院』という文字が見えた。




まだあるんだ。
私は病院が見えなくなるまで見ながらそう思った。

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