第3話

第二章 おきおばあちゃん
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2019/03/02 07:20
歩美(アユミ)
え?
状況が飲み込めず、思わず首をかしげてしまった。
歩美の母
今日のお昼、お母さんから電話があって...
歩美(アユミ)
嘘でしょ?
だって、おきおばあちゃんはいつも元気じゃん!
おきおばあちゃんは誰よりも、元気で健康なはずなのに...
歩美の母
それでね歩美。沖縄に行かない?
歩美(アユミ)
おきおばあちゃんに会いに?
歩美の母
うん
歩美(アユミ)
ママも?
歩美の母
一人で
『一人で』という言葉を聞いたとたん、不安になった。一人で飛行機に乗って行くなんて嫌だ。
歩美の母
おきおばあちゃんのこともあるけど、少し向こうで気分転換してきたら?
ママは間を開けてから、
歩美の母
前から考えていたの。ずっと、家に閉じこもっているのは体に悪いから。
でも、やっぱり不安だ。
歩美の母
空港まで、送っていくから
歩美(アユミ)
飛行機に乗るまで?
歩美の母
行けるとこまで
その言葉を聞いて、少し安心した。
歩美(アユミ)
降りたら?
歩美の母
おばあちゃんが待ってる
行こうか迷い、結局『考えておく』とだけ、ママに伝えて、自分の部屋に逃げた。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
歩美(アユミ)
おきおばあちゃん、病気治るのかな...
ベッドの上で、一人呟いた。
おきおばあちゃんがもし、治らなかったら?そう思うだけで、胸が苦しくなる。
『おきおばあちゃんは歩美のことをよく可愛がっていた。』
いつか、ママが言っていたのを思い出す。私も、覚えている。おきおばあちゃんは、私が家に遊びに行くと、必ずバニラアイスをくれるのだ。そして、一緒に楽しくお喋りをする。
そもそも、おきおばあちゃんは私がつけた名前だった。
おばあちゃんとおきおばあちゃんが一緒にいるとき、私が
歩美(アユミ)
おばあちゃん!
と呼ぶと、どちらも振り返って、『なあに?』と言ってきたので、私は笑いながら
歩美(アユミ)
じゃあ、おばちゃんの方は沖縄に住んでるから、おきおばあちゃん!
と言った。
ママは笑いながら、『二人とも沖縄に住んでるじゃない』と言ったけど、私はその頃まだ小さかったので意味がわからなかったけど、今思うとおかしな話だ。
『こんなことがあったのよ』と話すママ。
そんな話をしていたママは楽しそうだった。
最近、ママが笑ってるところ見てないな。
ママは笑うと頬にえくぼができる。最近仕事大変なのかな。
大変なのに、私の水泳見に来てくれたんだ。だけど、私は...
そう思うと、また目が潤んでくる。

もし私が最下位じゃなければ、笑っていたのかな。
寝返りをうち、机の上に置いてある時計を見る。もう10時だ。
小学生の頃は9時までに寝ないとお化けがでると信じてたけど、中学生になってから、遅いときは12時をこえるようになった。
歩美(アユミ)
もう寝るか...
目を閉じると、まぶたの上におきおばあちゃんの顔が浮かび上がった。
優しそうに、そして力強く笑っているおきおばあちゃん。
涙が頬を伝う。
行こうかな.....沖縄...

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