夢を見ていた──────
だから、私は頑張ってきた
勉強も、運動も、音楽も美術も全部
他の子を抜かし続けた
そしてミドルスクールの頃には、テストでも満点を取っていた
学年一の成績をキープし続けた
特に得意だった実践魔法は、ぶっちぎりだった
成功率は100
良い成績を取る度、両親は褒めてくれた
その一瞬の優越感、快楽に溺れすぎた結果が
今の私だった──────
頭がガンガン痛い
変な体勢で寝たせいか……
あるいはブロットか………
はたまた両方か
薄めのカーディガンを羽織って、そっと外に出た
鏡を抜けて、静まり返った校舎も抜けて
風さえない外をとぼとぼ歩いていた
気がつけば、知らない場所にいた
学園の敷地内のはずだけど……
寮のようにも見えるそれは、ボロボロだった
遠目から見ても、窓ガラスは割れ、壁も歪み
長らく手入れされていないのが分かった
ぼーっとそれを眺めていると
緑色に光る玉が周りを浮遊しているのに気がついた
パアン
月の光に照らされた痩せた木々が、ガサガサと音を立てたのを
私の耳からは遠く感じた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!