第30話

Story28
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2021/07/31 05:13





夢を見ていた──────









お母さん
お母さん
あなたは本当に可愛いわ
お父さん
お父さん
それに、周りの子と比べて優秀な子だ。私は鼻が高いよ
あなた

……ありがとう、お父さん、お母さん

子供
子供
ね、見てよあれ
子供
子供
え、自分が1番だと思ってんの?
子供
子供
うざすぎ
子供
子供
自惚れんなよな…
子供
子供
成績も俺の方が上なのにさ
子供
子供
私だって、あの子より上手にピアノ弾けるよ
子供
子供
なんであいつあんなに甘やかされてるわけ…
あなた

………………

だから、私は頑張ってきた




勉強も、運動も、音楽も美術も全部




他の子を抜かし続けた




そしてミドルスクールの頃には、テストでも満点を取っていた




学年一の成績をキープし続けた




特に得意だった実践魔法は、ぶっちぎりだった




成功率は100




良い成績を取る度、両親は褒めてくれた




その一瞬の優越感、快楽に溺れすぎた結果が




今の私だった──────









あなた

ん………ぁ……寝てた………

あなた

(課題の途中で寝落ちしちゃったか……
バスケで散々動き回ったから………)

あなた

(にしても……嫌な寝覚め………)

頭がガンガン痛い




変な体勢で寝たせいか……




あるいはブロットか………




はたまた両方か
あなた

(午後11時……中途半端な時間に寝れなくなっちゃった………)

薄めのカーディガンを羽織って、そっと外に出た




鏡を抜けて、静まり返った校舎も抜けて




風さえない外をとぼとぼ歩いていた
あなた

………なにこれ…

気がつけば、知らない場所にいた




学園の敷地内のはずだけど……




寮のようにも見えるそれは、ボロボロだった




遠目から見ても、窓ガラスは割れ、壁も歪み




長らく手入れされていないのが分かった




ぼーっとそれを眺めていると




緑色に光る玉が周りを浮遊しているのに気がついた
あなた

(……ゴースト…?)

???
……おや、珍しい………こんなところに人の子が…
あなた

(人……じゃない………ツノに耳の形……妖精族…?)

あなた

(それにあの服は……ディアソムニア寮の寮服…だよね)

あなた

あの、あなたは…

???
僕か?僕の名は………いや、知らない方がいい
あなた

………マレウス・ドラコニアさん…ですよね

マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
驚いた……僕を知っているのか
あなた

ええ、存じております

マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
人の子よ…なぜここにいる?
あなた

目が覚めてしまって……気分転換に

マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
そうか。
…ここは人通りも少ない
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
ひとりで考え事をするのにはうってつけだ
あなた

それは……私はお邪魔でしたね

マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
いいや。別に構わない
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
僕と平然と会話を交わす人間は初めてだ。面白い…
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
あなた・ホンテッド、僕はお前を気に入った。いつでもここへ来るといい。
また話すとしよう
パアン
あなた

………消え…た

あなた

(……強い魔力を感じた………
やっぱり規格外の魔力を持ってるんだ…)

月の光に照らされた痩せた木々が、ガサガサと音を立てたのを




私の耳からは遠く感じた

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