そして出発の日
制服、下着、筆記用具、ノート…その他もろもろ
必要最低限の物をトランクに詰めた
トランクと言っても、手提げカバン型の物だ
お気に入りの本を最後に入れて、トランクを閉じる
自室に鍵をかけ、外に出ると
5台の馬車があった
黒い影のような馭者
寮カラーと金色を基調にしている
白馬は時折足踏みをしている
警護隊
運動能力や分析力が優れた生徒で構成される
主に校内の警護を担当する
襲撃があれば、授業中だろうと緊急収集
確か……私が1年の時に野生のドラゴンが接近したことがあった
あの時の警護隊がかっこよかった記憶がある
確かに不気味だけど、動作は上品
場所の扉を開け、手を差し伸べてきた
シャナル先輩によると、これは人ではなく
魔獣の仲間……らしい
パタンと扉が閉められる
現在時刻午前8時
到着の頃は放課後だろう
窓の外を眺めていると、ガタンと場所が揺れる
途端に、景色が後ろに流れて行った
初めての景色に、僅かに興奮した
何時間見ても飽きないだろう
実家の近所や学校内以外は見たことがなかった
お昼を過ぎてお腹が鳴るまで、時が過ぎるのに気づかなかった
ちなみに、ノーブルシャドーカレッジがあるのは
賢者の島の離島だ
離島と言っても、絶海の孤島という訳では無い
海は、学校から少しだけ見たことがあった
だけど今は、海の上を馬車が入っている
少し窓を開ける
潮の匂いの飛沫が馬車の中に入ってくる
懐かしい故郷の匂いがした
私は直ぐに、窓を閉めた
そして、昼食のハムのサンドイッチを手に取り
パンの端っこを小さくかじった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!