翔也が木を覗き込む。
侑ちゃんが走り寄る。
日が傾きかけたからか、神社から連なる提灯にあかりが灯り始めた。
急に立ち止まり神社への階段を見つめるあや
あやは階段上の境内を見つめた
一緒に遊ぼう・・・
あれ?虫の音が聞こえない
さっきまで、大合唱していたカエルや蝉の鳴き声も今は全く聞こえない。
振り返り、声をかけながらあやに近づく
立ち尽くすあやの視線は不自然に曲げられた
自分の指を見つめていた
まるで何かを握っているかのような手を
あやが手を引かれるように足を踏み出した。
虚な視線、あなたの声は届いていない。
慌てて肩を掴んだ
と侑がもどってくる
急に蝉がぶつかってきた
飛んできた方を見れば、小さな男の子が
走り去っていく後ろ姿が見えた気がした。
急に虫の音が鳴り出す
侑ちゃんが顔を覗き込んでくる。
侑ちゃんはまた私達の手を繋ぎ歩き出した。
とあやも微笑んでいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!