───処変わって、路地裏。
真っ黒な車から降りてくる、少女と少年。
二人は暫く無言で歩いた後、歩みを止めた。
少年が声をかけるが、少女は特に気にすることも無く歩いていく。
そんな少女を見て、少年も小走りで着いて行った。
□
其処は、廃工場の様な処だった。
奥から愉快そうに笑う不埒な奴らの声が聞こえてくる。
そんな声が、一瞬で消えた。
───バタンという音と共に。
奴らは皆入口の方を見た。
其処には、場違いにもへにゃりと笑っている少年と、掌を前に翳した少女が立っていた。
奴らの一人が声を上げる。
だが、二人はそんな声を耳に入れさえもしていない様だ。
今度は少女は無視することなく、無愛想に応えた。
吹き飛ばされまた扉を見た奴らの一人が声を上げる。
其の時、少年は場違いな程に、
......否、
寧ろ相応しい。
真っ黒な笑みを浮かべていた───
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!