僕の名前は中島敦。
故あって、餓死寸前です───。
〖お前など孤児院にも要らぬ!〗
〖どこぞで野垂れ死んだ方が世間様の為よ!〗
孤児院で云われた言葉が蘇る。
バッ(川から気配っ!)
敦が振り向くと、そこには人が川に流されていた。
どんどんと流されてゆくその足を、烏が止まってつついている。
□
結果的に人命救助をした、中島敦。
恐る恐る男に尋ねる敦。
ギロッ...!
急に男の目が開かれた。
敦)ビクーーーー!
思いっきり舌打ちをする男。
敦は驚きで飛び跳ねた。
何事でもないかのように云う男。
敦が心の中でツッコんでいると、後方から少女が走ってきた。
少女が男の元に駆け寄ると男はさぞかし嬉しそうにへにゃりと笑う。
少女は黙ったままこくんと頷いた。
その様子が可愛くて仕方がなかったのか、男は少女の頭をにこにこしながら撫でまくった。
敦)ぐうううう...!
突然敦の腹の虫がなった。
撫でる手を止めずに男が問う。
男)ぐうううう...!
男の腹からもだ。
───男が奢ってくれるのではないか?
そんな考えを少しでも持った敦は考えが甘かった様だ。
敦は項垂れた。
其処に...
川の向かいから一人の男が叫ぶ。
男が呑気に返す。
等と川の向かいの男は叫んでいるが、そんなことは少しも気に止めていない男。
男はポン!と手で合点して云った。
少女も賛同した。
またも川の向かいから怒鳴り声が聞こえてくるが、矢張り気にしない。
敦は遠慮気味に話し出す。
敦の言葉に男がぶはっと吹き、笑う。
すかさず川の向かいからツッコミが飛んでくる。
少女の呟きは幸い耳に届かなかった様だ。
男は此処で漸く自己紹介をする。
あなたの頭の上に手を乗せながら、云った。
あなたは矢張り無表情なまま、無愛想ながらも応えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。