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第8話

虎が見つかったようです。
───十五番街、倉庫内。

コンテナの上に三角座りをしている敦と、其の向かいのコンテナの上に座り、読書を嗜んでいる、太宰。
そして、その隣にちょこんと座り、足をぶらぶらさせている、あなた。
中島 敦
中島 敦
太宰さん、何読んでるんですか?
沈黙に耐えかねた敦が問うた。
太宰 治
太宰 治
良い本だ
太宰は本から顔を上げる素振り全く見せず、其の儘応える。
中島 敦
中島 敦
こんな処で、よく読めますね...
敦の云う通りだ。
倉庫の中はほんの少し月明かりが差し込んでいるだけで、殆ど闇と同じだ。
太宰 治
太宰 治
目は良いからね。
其れに、内容はもう全て頭に入っているし
太宰は矢張り、本から顔を上げない。
中島 敦
中島 敦
じゃあ、何で読んでいるんですか?
太宰 治
太宰 治
何度読んでも、良い本は良い
そのやり取りを、あなたは黙って見ている。
中島 敦
中島 敦
本当に、此処に虎は現れるんですかね?
敦は不安げに問う。
太宰 治
太宰 治
現れる
太宰は云い切った。
太宰の言葉に敦は怯えた。
太宰 治
太宰 治
心配いらないよ。もし現れても、私の敵じゃあ無いよ。こう見えても、武装探偵社の一隅だ
中島 敦
中島 敦
凄い自信ですね...何か羨ましいです。僕なんか、孤児院でも駄目な奴ってずっと云われてて...其れに、今日の寝床も、明日の食い扶持も知れない身で...
〖天下の何処にも、御前の居場所などありはせん!〗
中島 敦
中島 敦
確かに、こんな奴が何処で野垂れ死んだってら誰も気にしない。否、いっそ虎に食われて死んだ方が...
太宰 治
太宰 治
説法さて、そろそろだね
太宰は天窓から、ほんのり蒼い、今宵の月を眺めた。
───ガシャン!

倉庫の奥で突然物音が鳴り響く。
中島 敦
中島 敦
ひぃっ!?
敦は驚き、勢い余ってコンテナから落ちてしまう。
中島 敦
中島 敦
だっ、太宰さんッ!今物音が!
太宰 治
太宰 治
そうだね
慌てふためく敦に冷静な太宰。
そして、先程から全く表情が動いていないあなた。
中島 敦
中島 敦
や、奴ですよ...!太宰さん!
敦は慌てて後退する。
太宰 治
太宰 治
否、風で何か落ちたんだろう
太宰が否定するが、敦は半分パニック状態で、落ち着く事は無かった。
中島 敦
中島 敦
ひ、人食い虎だ!僕を食いに来たんだ!
太宰 治
太宰 治
...落ち着き給え、敦君
パンッ、と先程まで読んでいた本───【完全自殺読本】を閉じる。
太宰 治
太宰 治
存なそんな処からは来ないよ
中島 敦
中島 敦
...ッ!何故分かるんです...!?
───そもそも、変なのだよ。と立ち上がる。
そして小声で、あなたは此処で待っているんだよ?、と囁いた。
あなたがこくんと頷いたのを確認すると、太宰は満足気に笑い、コンテナから飛び降りた。
太宰 治
太宰 治
経営が傾いたからって、存な理由で養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ。
否第一に、経営が傾いたのなら、一人二人追い出した所で如何にもならない。半分位減らして、他の施設に移すのが筋だ
中島 敦
中島 敦
な、何を云っているです...?太宰さん...
太宰 治
太宰 治
君がこの街に来たのが二週間前。

虎がこの街に来たのも、二週間前。

君が鶴見の辺りに居たのが、四日前。

其の辺りで虎が目撃されたのも、四日前。
敦は唯呆然と月を見つめている───
太宰 治
太宰 治
国木田君が云っていたろう。武装探偵社は異能力者の寄り合いだと
段々と敦の身体に変化が起こり始める。
太宰 治
太宰 治
余り知られてはいないが、世間にも異能力を持っている者は少なからず居る
もう敦の姿は、太宰の話を聞いているのかも解らない程、変化していた。
太宰 治
太宰 治
そして、其の異能で成功する者も居れば、自らの異能で身を滅ぼす者も居る
この時、もう敦の身体は完全に白い虎へと変わっていた。
太宰 治
太宰 治
多分施設の人は、君の正体を知っていたが、君には教えなかったんだろう。君だけが分かっていなかったのだよ
虎は太宰の方をギロッと睨んでいる。
太宰 治
太宰 治
君も異能の力を持つ者だ。現身うつしみ機獣きじゅうを延ばす、月下の能力者
虎は四本の脚で強く地面を蹴ると、太宰の方へと飛んで攻撃を仕掛けてきた。
太宰 治
太宰 治
こりゃあ凄い
太宰がかわしたので、其の後ろに在ったコンテナが砕け散った。
太宰 治
太宰 治
人間の首位、簡単に圧し折れるね
太宰 治
太宰 治
───おっと
太宰は虎の攻撃を軽やかに飛んで躱していたが、壁まで追い詰められてしまった。
太宰 治
太宰 治
獣に食い殺される最期というのも、中々悪くは無いが...君では私を殺せない
───異能力〈人間失格〉
太宰が敦の額に触れると、白く眩い光が敦を包み込む。
太宰 治
太宰 治
私の異能力は、相手の異能力を触れただけで無効化する
眩い光が消えたかと思うと、敦は元の人間の姿へと戻っていた。
太宰 治
太宰 治
男と抱き合う趣味はないっ、と
其の儘倒れかけてきた敦を太宰は床に放る。
国木田 独歩
国木田 独歩
───おい!太宰!
太宰 治
太宰 治
お〜!遅かったなぁ、国木田君!
倉庫の入口から走って入って来たのは国木田だ。
太宰 治
太宰 治
"トラ"は"トラ"えたよ
国木田 独歩
国木田 独歩
真逆、この小僧が...?
敦は相変わらず地面に突っ伏している。
太宰 治
太宰 治
虎に変身する異能力者だ
国木田 独歩
国木田 独歩
...ったく
国木田は何故か呆れているようだ。
太宰 治
太宰 治
ん?
国木田 独歩
国木田 独歩
何だ、このメモは?
太宰 治
太宰 治
「十五番街の倉庫に虎が出る。逃げられぬ様周囲を固めろ。」とても良いメモだ。そうは思はないかい、あなた?
You
You
...凄く簡潔で良いメモだよ...
国木田 独歩
国木田 独歩
要点が抜けとる。次からは事前に説明しろ。お陰で非番の奴等まで駆り出す始末だ
倉庫の入口から歩いてくる人影が三つ。
国木田 独歩
国木田 独歩
後で皆に酒でも奢れ





───
与謝野 晶子
与謝野 晶子
何だい。怪我人は無しかい詰まんないね
与謝野晶子───能力名〈君死給勿〉
江戸川 乱歩
江戸川 乱歩
中々出来るようになったじゃないか、太宰。まぁ、僕には遠く及ばないけどね!
江戸川乱歩───能力名〈超推理〉
宮沢 賢治
宮沢 賢治
でも、この人如何するんです?自覚は無かった訳でしょ?
宮沢賢治───能力名〈雨ニモマケズ〉
国木田 独歩
国木田 独歩
如何する。一応区の災害指定猛獣だぞ
国木田独歩───能力名〈独歩吟客〉
太宰 治
太宰 治
ふふ。実はもう決めてある。ね、あなた
太宰治───能力名〈人間失格〉
You
You
......うん
あなた───能力名〈からくり人形の様に〉
??
太宰 治
太宰 治
───うちの社員にする!
宮沢 賢治
宮沢 賢治
おお!
与謝野 晶子
与謝野 晶子
何それ
江戸川 乱歩
江戸川 乱歩
矢っ張り馬鹿だな。太宰は
国木田 独歩
国木田 独歩
はぁ!?貴様どんな権限があって其れを───
太宰 治
太宰 治
起きろ少年!
───回忌犇めくこの街で、変人揃いの探偵社。之より始まる怪奇譚。之が先触れ、前兆し。