第18話

じゅうなな
177
2019/05/19 06:21
ただいまー‥‥
玄関に入ると、母さんが待っていた。

母さんの手には───────
金属、バッド‥‥‥?
母さん
ごめんねぇ?ちょーっとだけイライラし過ぎたみたいなの
母さんは醜い笑顔を浮かべながら、俺に近付いた。
正気かよっ‥‥‥!
俺は玄関のドアに手をかけ、外に逃げようとする。
母さん
あはは!逃がさないわよっ


─────────ガン!



突然、足に激痛が走る。

‥‥‥‥金属バッドを投げられた。
っ‥‥‥‥
俺はその場に膝をつく。
母さん
良いストレス発散機があって良かったぁ
母さんは俺の髪を掴み、カッターナイフを手にした。

そして、俺を倒すと腕にカッターナイフを刺した。
っあぁ‥‥‥!
母さん
あー、まだイライラする‥‥‥!
母、さん‥‥やめ‥‥‥‥‥
母さん
私はあんたの母親になった覚えはないよ
そして、俺の腕にまたカッターナイフを立てる。
っ‥‥‥
母さん
あんたが私の息子だったら、こんなことしないもんねぇ?
そして、母さんはカッターナイフに力を入れた。
っあ″ぁ‥‥‥!!
おかしい。今日の母さんはおかしい。
母さん
痛い?苦しい?ふふっ‥‥その顔、良いねぇ
や‥‥‥‥
母さん
あー、イライラする
母さんは何度も何度も俺の腕にカッターナイフを刺した。
っあ″ぁ!!
痛い、痛い、痛い、痛い。

やめろ。やめてくれ。俺は‥‥‥
母さん
はぁはぁはぁ‥‥‥‥
母さんは金属バッドを手にする。
なに、を‥‥‥
母さん
ん?殴る他に何があるの?
────────やばい。

逃げないと。

でも、足は動かないし腕は血塗れで逃げるどころじゃ‥‥‥
母さん
ふふっ
母さんは金属バッドを振り下ろした。
っあぁ‥‥‥
後頭部に激痛が走り、意識が揺らぐ。
母さん
あーあ、気絶しちゃった
母さん
まあいいや、起きたら再開しよ
最後に見えたのは‥‥‥


────────母さんの醜い笑顔だった。





















それで、目が覚めたら母さんがいなかった
だから隙をついて家から逃げ出して‥‥‥そこに、朝陽がいたんだ
母さんが警察に説明した“強盗”とは真っ赤な嘘で、この傷は母さんが付けたものなのだ。
‥‥‥‥って、何で朝陽が泣いてるんだよ
俺は、朝陽の涙を指先で拭う。
日暮 朝陽
だって、だって‥‥‥
日暮 朝陽
三田くんのお母さんは殺したいほど酷いし‥‥
殺したいほどって‥‥‥
日暮 朝陽
それに、三田くんだって‥‥‥
日暮 朝陽
泣いてるじゃん
‥‥‥‥え?
朝陽に言われて、自分の目に触れる。
何で、泣いて‥‥‥
すると、朝陽が俺の手を握った。
日暮 朝陽
強がらなくて良いんだよ?
日暮 朝陽
痛かったら、苦しかったら、悲しかったら
日暮 朝陽
泣いていいんだよ?
日暮 朝陽
無理しないで?
日暮 朝陽
それにさ、三田くん、「いつ死んでもどうでも良い」とか思ってるでしょ?
日暮 朝陽
そんなの駄目。私が許さない
日暮 朝陽
‥‥‥もし、生きる理由が見つからないのなら
朝陽は大きく息を吸った。
日暮 朝陽
私の為に生きて




初めて、言われた言葉だった。





だから、どんな反応をして良いかわからない。

ただただ、全身から涙が込み上げてくるだけ。
柚木 海斗
ひぐっちゃんの為だけじゃ困るなぁ
井沢 紫乃
右に同じく
いつの間にか、海斗と井沢が病室に入っていた。
日暮 朝陽
‥‥‥もしかして、ずっと聞いてた?
柚木 海斗
おう。ばりばり聞いてたな
井沢 紫乃
何か泣きそうになりながら聞いてたよ
日暮 朝陽
お、お恥ずかしい限りです‥‥‥
そんな会話を見ていて、何だか心が温かくなった。

無意識に、口角が上がる。
‥‥‥ありがと
俺がそう言うと、皆は笑った。


『『当たり前のことをしただけです!』』


皆は口を揃えた。





そうだな。そうだよ。

皆の為に生きよう。



隣に皆がいてくれれば、もう怖くない。
















きっと、これからも‥‥‥ずっと。



プリ小説オーディオドラマ