玄関に入ると、母さんが待っていた。
母さんの手には───────
母さんは醜い笑顔を浮かべながら、俺に近付いた。
俺は玄関のドアに手をかけ、外に逃げようとする。
─────────ガン!
突然、足に激痛が走る。
‥‥‥‥金属バッドを投げられた。
俺はその場に膝をつく。
母さんは俺の髪を掴み、カッターナイフを手にした。
そして、俺を倒すと腕にカッターナイフを刺した。
そして、俺の腕にまたカッターナイフを立てる。
そして、母さんはカッターナイフに力を入れた。
おかしい。今日の母さんはおかしい。
母さんは何度も何度も俺の腕にカッターナイフを刺した。
痛い、痛い、痛い、痛い。
やめろ。やめてくれ。俺は‥‥‥
母さんは金属バッドを手にする。
────────やばい。
逃げないと。
でも、足は動かないし腕は血塗れで逃げるどころじゃ‥‥‥
母さんは金属バッドを振り下ろした。
後頭部に激痛が走り、意識が揺らぐ。
最後に見えたのは‥‥‥
────────母さんの醜い笑顔だった。
母さんが警察に説明した“強盗”とは真っ赤な嘘で、この傷は母さんが付けたものなのだ。
俺は、朝陽の涙を指先で拭う。
殺したいほどって‥‥‥
朝陽に言われて、自分の目に触れる。
すると、朝陽が俺の手を握った。
朝陽は大きく息を吸った。
初めて、言われた言葉だった。
だから、どんな反応をして良いかわからない。
ただただ、全身から涙が込み上げてくるだけ。
いつの間にか、海斗と井沢が病室に入っていた。
そんな会話を見ていて、何だか心が温かくなった。
無意識に、口角が上がる。
俺がそう言うと、皆は笑った。
『『当たり前のことをしただけです!』』
皆は口を揃えた。
そうだな。そうだよ。
皆の為に生きよう。
隣に皆がいてくれれば、もう怖くない。
きっと、これからも‥‥‥ずっと。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。