明日から夏休み。
まあ、宿題が多すぎて休める気がしないけど‥‥‥
あくびをかきながら夜空の下を歩く。
ここは都会でもないが田舎でもない曖昧な場所だけど、都会と同じで星はあまり見えない。
それに、今日は新月だから暗い。
そんなことを呟きながら暫く歩いていると、人影が見えた。
私は人影に目を凝らす。
────────────三田くん。
─────────バタ
三田くんは、その場に崩れ落ちた。
私は三田くんに駆け寄った。
三田くんの頭からは、血が出ていた。
腕には沢山の深い切り傷、大きな痣、顔色はとても悪かった。
そして、三田くんは救急車で搬送された。
息を切らしながら、柚木くんと井沢さんは緊急手術室の前に現れた。
珍しく、井沢さんは取り乱している。
私は、医師から言われたことを二人に伝える。
私は笑ってみせた。
「大丈夫」と自分に言い聞かせるように。
突然、ふわっと良い匂いがしたかと思えば、井沢さんが私を抱き締めていた。
井沢さんはそっと腕をほどいて、私に笑いかけた。
────────私の震える手を握って。
駄目だ。今にも泣きそうになる。
こんなところで、泣きたくないのに‥‥‥‥
突然、看護師が電話を持って私たちに駆け寄った。
その言葉に、柚木くんと井沢さんと目を見合わせた。
そして、首を横に振る。
‥‥‥‥え?
事件‥‥‥
三田くんが一言も口に出さなかった家族の話。
それにきっと、何かが隠れている──────。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。