第3話

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2019/12/24 08:22
放課後。

校庭から、サッカー部の生き生きとした声が
聞こえる。

帰宅部の俺は、独りで教室にいた。


別に、誰かを待っているとかではない。

普通に、家に帰りたくなかっただけ。
クラスメイト
何してるの?
突然、クラスメイトに
放課後の優雅な時間を邪魔された。
優雅な時間を過ごしてる。
井沢紫乃いざわしの。それがこの人の名前。
井沢 紫乃
何よ。それ。
世間でいう、お嬢様。

文武両道で美人。だけど、皆から性格が悪い
と言われている。




ガタン




俺が座っている席の、前の席に井沢が座る。
井沢 紫乃
話し相手をして。
話し相手か...
井沢 紫乃
クラスで誰かに話しかけられても
反応が薄いあなたでも話し相手なら
できるでしょ?
俺、そんな風に思われてるのかよ。
口はあるから。
井沢 紫乃
そ。なら話し相手宜しく。





















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井沢が帰った。

最後に何かを言いかけていたけど、どうか
したのだろうか。



校庭から、サッカー部の声が消えた。

空を見ると、オレンジ色の夕陽が浮かんでいた。
クラスメイト
お!三田!
そして、またもやクラスメイトに
優雅な時間を邪魔された。
...
柚木 海斗
何だよー。素っ気ねぇーな。
柚木海斗ゆぎかいと。この人の名前。

この人も文武両道。そこらの女子がイケメンだの
なんだの騒いでる人。

性格も、面白くて優しい。女子が騒ぐわけだ。
柚木 海斗
あ!そうだ!
柚木 海斗
勉強教えてくれないか?
前言撤回だ。文武両道じゃねぇのかよ...
勉強できるだろ。
柚木 海斗
いやぁ、ね?ほら、
何を誤魔化しているんだ。こいつは。
柚木 海斗
皆がそう思い込んでるだけで、
本当は頭わりぃんだよ。俺。
それで気まずくて、本当のことが
言えなくなったパターンか...
何で俺?
柚木 海斗
いや、三田、頭良いだろ?
だから教えてもらおうかと...
柚木 海斗
頼む!
柚木はそう言って、両手を顔の前で合わせる。
はぁ...
いいよ。
柚木 海斗
本当か⁉
柚木 海斗
よっしゃぁぁぁぁぁぁ!
うるさい。
柚木 海斗
いつも、この時間、教室に
いるのか?
まあね。
柚木 海斗
じゃ、この時間でいいか?
どうぞご勝手に。
柚木 海斗
じゃあ、宜しくな。
柚木 海斗
俺、帰るな。
柚木 海斗
明日から宜しく!三田先生!
柚木は手を振りながら「にかっ」と笑って
教室を出ていった。


ああ、この笑顔が好きなんだ。皆。

そう、思った。




















─────────────────────────────────






















外が完全に暗くなった。

そろそろ警備員が来るだろうか。
日暮 朝陽
あ...
そんなことを考えていると、また、
優雅な時間を邪魔された。
日暮 朝陽
三田くん...
日暮が申し訳なさそうな顔をしている。

昼のことでも考えているのだろうか。
日暮 朝陽
昼のとき、ごめんね...
やっぱり、昼のことだった。
日暮 朝陽
助けてもらったのに、
お礼も言わないで...
別にいいよ。気にしてない。
俺がそう言うと、日暮はほっとしたような
顔をする。

本当に、心配してたんだ。
日暮 朝陽
夜は、いつもここにいるの?
ああ。
日暮 朝陽
じゃあさ、
日暮 朝陽
夜だけ、友達になってくれる...?
夜だけ...?
日暮 朝陽
昼、一緒にいたら三田くんが
いじめられちゃうかもしれないから...
そういうことか。
いいよ。
日暮 朝陽
うん。そうだよね。駄目だよね...え?
日暮 朝陽
い、いいの...?
おう。
俺がそう言うと日暮は、笑って
日暮 朝陽
ありがとう。
と言った。





















夜の、友達か...

少し面白そうだな。

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