────────星が点々と輝く満月の夜。
夜の散歩ついでに間近で月を眺めるため、僕は学校の屋根の上へ飛んだ。
何も無い静かな屋根に足を着けると、奥にキラリと輝く一つの長い影が見えた。
その影は人の形を成しており、確認するため躊躇いなく影の傍まで近づく。
影の正体は、目を閉じて横たわる若々しくも大人びた顔立ちの娘。身に付けている服は趣あるも一風変わっている。
腰元に布らしき物を巻いていて、全体の衣装は淡い白と水色のグラデーションが実に鮮やかだ。
一方で、娘が立った際に地面まで着くのではないか?と言いたくなる程の長すぎるストレートヘアーは、透明感ある氷のように……純度の高い水のように流れ、透き通っていて、月の光でより輝いて見える。
先程遠くから見えた光は、この美しい髪だったのだろう。
月から来たと言われても納得出来るぐらい、儚げで神秘的。何者かが人に化けて姿を現したとも言える程、娘は色白で浮世離れした容姿をしていた。
立ったまま足元で眠る娘を見下ろし目を凝らすと、穢れの無さそうな娘の身体には似合わないかすり傷が所々付いている。微かに流れる血で白い肌が際立って見えるけれど、それでも娘の氷肌玉骨さは変わらない。
いや、それよりも先程から気になっていたが、娘の隣に金で装飾された白い剣が落ちているのだ。
僕が知る剣とは少し変わった形をしているが。
娘の隣でしゃがみ、息があることを確認する。
近寄る事に躊躇いは無かったが、“純白”の化身とも言える娘に触れても良いのだろうかと一瞬迷いながらも恐る恐る娘の首元に触れた。……人にしては冷たい。
このまま見て見ぬふりをするのも忍びないと思い、落ちていた剣を拾ってから娘を両手でゆっくりと抱える。
帰ったらリリア辺りが驚いて何か言われるだろう……なんて予想をしながらも、僕は魔法を使ってその場から消え、ディアソムニア寮へと帰った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。