第25話

二十四話 ルーツ
1,153
2022/07/06 18:15
授業合間の休み時間、お手洗いから一人廊下歩いていると、見覚えのある“ツノ”が視界に入り、思わず後を追った。
あなた
あなた
ツノ太郎……?
ボソッと呟いただけなのに、少し離れた先にいるツノ太郎がくるっと振り返った。
私だと気付くや否や、「呼んだか?」と聞き返し戻ってくる。
あなた
あなた
姿が見えたからつい……。呼び止めてしまったみたいですまない。
にしても、良く聞こえたな
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
僕は耳と目が良いからな
あなた
あなた
やっぱり妖精族だからか?
関係あるのかは知らないが
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
妖精族だからと言うよりは……
マレウスは静かに目を逸らし、考える素振りを見せるが、直ぐに「いや……まぁ、そんなとこだ」と答えた。
はぐらかされた感じがしたが、言えない理由でもあるのだろうか。
あなた
あなた
(言いづらい話の一つや二つはあるか。他の生徒達も私が魔法を使えないただの人間だと思っているし……実は私が“力”も使えて、審神者もやっていて、おまけに“龍”の姿になれるなんて言ったらどうなるのだろうか)

私が魔法を使える理由。
それは、私が“龍族”だから。正しくは“龍人族”。
私は私以外の龍人族に会ったことは無いが、“人”では無い“龍神族”の存在は時の政府界隈で耳にした事がある。
何回か調べたこともあったが、存在していた証拠や、情報があまりにも無さすぎて、未だに謎が多い。
ただ分かっているのは、龍神族は高い神力と共に霊力、魔の力を持っており、姿形は様々だが共通して“龍”になれること。
“龍神”とまでは行かずとも、“龍人”もまた高い潜在能力を秘めており、“龍神族”同様にそれぞれ属性がある。私は水を司る“龍人”のせいか、生まれた時から髪や容姿が他の人達と違っていた。
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
どうかしたか?
あなた
あなた
何でもない。
考え事をしていただけだ
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
そうか。あぁ……そう言えば、昨日の放課後にシルバーから告白されたそうだな
あなた
あなた
告は……?違う。アレはヴィルに言われてどちらも仕方なく……
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
冗談だ。詳細はリリアとシルバー本人から聞いた
あなた
あなた
何故リリア殿が……?
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
一部始終を目撃していたらしい
撮影したのは外廊下だし、誰に見られてもおかしくは無い。思い返すと、慣れないことをしたものだと溜息をつきたくなる。
と言っても、私は立っているだけだったので酷なのはシルバーの方だろう。
あなた
あなた
(詳細は二人から聞いたと言っていたが、私はツノ太郎の代理?だったと言う話も知っているのだろうか)
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
お前も登校初日で災難だったな
あなた
あなた
全くだ。でも、そう悪いことばかりじゃなかったさ
オンボロ寮にいる鶴丸を思い出し、笑みが零れると「何か、いいことでもあったのか?」と聞かれる。
鶴丸が居ると言う話は流石に言えなかったので、「食料確保と稼ぎ先が見つかった」と答えた。
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
食料と稼ぎ先……?なるほどな。
お前は異世界から来たせいもあって無一文だから、食料も買えないのか。うっかりしていた。街には許可がなければ行けないし、学園内で稼ぐとしたら……モストロ・ラウンジか?
あなた
あなた
そうだ。放課後、オクタヴィネル寮の寮長と会ってな。裏方としてアルバイトすることになったんだ。
食料は食堂にある余り物を貰った
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
ならいいが……オクタヴィネルの三人にどんな無茶振りされるか分かったものではないし、気を付けろ
あなた
あなた
あぁ
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
……と、そろそろ教室に戻る時間だ。偶然とは言え、話せて良かった。それじゃあ僕はもう行く
あなた
あなた
私も戻らないとな。じゃあまた
教室に戻ると、グリムが「随分と長いお手洗いだったな」と言って来る。すると、デュースが「おい、バカっ!デリカシーってもんがあるだろ」とグリムの頬っぺを引っ張った。
そんなデュースに対し、今度はエースが「イヤイヤ、言いたいことはわからなく無いけど、お前はお前で何を考えたわけ。察したけど」と指摘する。
私からすれば、君も一体何を考えているんだと言ってやりたい。
あなた
あなた
偶然廊下で先輩と会って立ち話していただけだ
デュース・スペード
デュース・スペード
あーなるほど。立ち話だったか
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
てか、先輩?
エースが首を傾げると同時に、チャイムが鳴り、何事も無かったかのように席に座る。
授業が開始する中、窓の外で飛ぶ鳥達を見て、鶴丸が一振オンボロ寮で何をしているのか考えてしまう。
あなた
あなた
(鶴丸の奴、まさか私が居なくて落とし穴とか掘ってないよな?掘る道具は無いから大丈夫だろうけど。いや、あいつのことだしなんかしら掘る方法考えて実行しそうなんだよな。比較的大人しめな個体ではあるが、暇になりすぎると時々悪戯し始めるからな)
授業の合間、ノートをとりながら私はオンボロ寮の庭の心配をするのだった。

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