授業合間の休み時間、お手洗いから一人廊下歩いていると、見覚えのある“ツノ”が視界に入り、思わず後を追った。
ボソッと呟いただけなのに、少し離れた先にいるツノ太郎がくるっと振り返った。
私だと気付くや否や、「呼んだか?」と聞き返し戻ってくる。
マレウスは静かに目を逸らし、考える素振りを見せるが、直ぐに「いや……まぁ、そんなとこだ」と答えた。
はぐらかされた感じがしたが、言えない理由でもあるのだろうか。
私が魔法を使える理由。
それは、私が“龍族”だから。正しくは“龍人族”。
私は私以外の龍人族に会ったことは無いが、“人”では無い“龍神族”の存在は時の政府界隈で耳にした事がある。
何回か調べたこともあったが、存在していた証拠や、情報があまりにも無さすぎて、未だに謎が多い。
ただ分かっているのは、龍神族は高い神力と共に霊力、魔の力を持っており、姿形は様々だが共通して“龍”になれること。
“龍神”とまでは行かずとも、“龍人”もまた高い潜在能力を秘めており、“龍神族”同様にそれぞれ属性がある。私は水を司る“龍人”のせいか、生まれた時から髪や容姿が他の人達と違っていた。
撮影したのは外廊下だし、誰に見られてもおかしくは無い。思い返すと、慣れないことをしたものだと溜息をつきたくなる。
と言っても、私は立っているだけだったので酷なのはシルバーの方だろう。
オンボロ寮にいる鶴丸を思い出し、笑みが零れると「何か、いいことでもあったのか?」と聞かれる。
鶴丸が居ると言う話は流石に言えなかったので、「食料確保と稼ぎ先が見つかった」と答えた。
教室に戻ると、グリムが「随分と長いお手洗いだったな」と言って来る。すると、デュースが「おい、バカっ!デリカシーってもんがあるだろ」とグリムの頬っぺを引っ張った。
そんなデュースに対し、今度はエースが「イヤイヤ、言いたいことはわからなく無いけど、お前はお前で何を考えたわけ。察したけど」と指摘する。
私からすれば、君も一体何を考えているんだと言ってやりたい。
エースが首を傾げると同時に、チャイムが鳴り、何事も無かったかのように席に座る。
授業が開始する中、窓の外で飛ぶ鳥達を見て、鶴丸が一振オンボロ寮で何をしているのか考えてしまう。
授業の合間、ノートをとりながら私はオンボロ寮の庭の心配をするのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。