学校の敷地内に入ると、外廊下の方に機材が沢山置いてあり、人が数人集まっていた。
その中に、ディアソムニア寮ですれ違った銀髪の青年と、一際目立つ容姿を持った金髪の青年が立っているのを目にする。
ついつい足を止めていると、背後から「そこで突っ立って何してるんだ」と声を掛けられ、振り返る。
私が口を開いた瞬間「クルーウェル先生、その子誰なの?」と、先程まで銀髪の青年と話していた金髪の青年が真横にやって来て私を見る。
ヴィルの話を聞いて、私は思わず吹き出しそうになった。クルーウェル先生も眉間に皺を寄せ、若干引き気味だ。
話を聞く限り、シルバーは偶然居合わせたヴィルに“強制”参加させられたのだろう。
嫌々ながらもここまで付き合うとは、彼も真面目なのか単に押しに弱いのか……。
薄々感じてはいたが、ヴィルもクルーウェル先生も美意識が高く、ファッションや流行りにうるさそうだ。二人を見て脳内を過ったのは歌仙兼定や燭台切光忠、松井江や加州清光、乱藤四郎などの美意識高いオシャレ刀剣男士。歌仙や松井に関してはオシャレ云々より、作法や整った身なりに重きを置いているのかもしれないが。
幼い頃に母が亡くなった後、私は刀剣男士達に面倒を見られてきた。私がこの場に居るのは彼等のおかげと言っても過言ではない。
じゃなきゃ、村にいた時と同様ずっとボロ姿だっただろう。
いつの間にかシルバーも会話に入り込み、内心ギョッとした。
責任感が強いのは良いが、正直、本来巻き込まれただけのシルバーがそこまで責任を感じる必要はあるのかとすら思えてくる。
─────ヴィルの言葉で撮影は再び開始された。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!