────────ナイトレイブンカレッジ、中廊下。
ミステリーショップからとぼとぼと中廊下を歩いていると、見覚えのある姿が視界に入る。
長身で寒色系のアシンメトリーヘアー。見覚えは確かにあるのだが……違和感もある。
突然後ろから声を掛けられ、振り向くと、本物のジェイドがおり、隣には眼鏡を掛けた銀髪の青年が立っている。
廊下の先に居たジェイドの双子の片割れがズボンのポケットに手を入れながら此方へ歩いてくる。
どんな偶然か知らんが、どうやらオクタヴィネルの三人に囲まれてしまったみたいだ。だが、丁度いい。
モストロ・ラウンジに行くまでの手間が省けた。
眼鏡を掛けている青年“アズール”が聞くと、フロイドは「終わったー」と気怠げに答え、話をする。
二人共長身なので、見上げていると首を痛めそうになる。同時に、長身で双子に見える静形薙刀と巴形薙刀をふと思い出してしまった。
心の中でツッコミを入れていると、急にフロイドが髪に触れてくるので一瞬固まってしまった。
ジェイドに注意されたフロイドはパッと手を離し、軽く謝罪する。
私の髪が変わっているのは自覚がある。
私の母は見た目こそ黒髪で肌は黄色と、日本人なら割といる容姿をしていたけれど、私は生まれた時から色白でこの髪色だった。
ジェイドから笑顔でストレートに言われたが、否定はしない。プライベートで他者と話すのと接客は違う。
私は口達者な訳でも無いので、逆に不快にさせてしまうだろう。
これが社会で一般の仕事ならば職場内で仕事を選ぶな、嫌な仕事から逃げるなとか一喝されそうだ。でも、仕事を選べる環境に居て選択できるなら、自分にやれる仕事を選ぶに越したことはない。
三人はそれだけ言うと、笑顔で去って行った。
雰囲気からして少々怪しげな三人組だし、仕事で何を任されるか不安がない訳では無いが、この世界にいる間だけのバイトだ。耐えて見せよう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!