第13話

十二話 飛行術
1,602
2022/07/08 14:34
午後の授業の一つは飛行術で、他クラスとの合同。
グリムからジャック・ハウルやエペル・フェルミエの二人を紹介され、エースとデュースは二人と仲良さげに話していた。
グリム
グリム
あなた、俺が飛ばしてやるからさっさと箒に乗るんだゾ!
箒に跨り、グリムが魔法で飛ばすが、その間どうやったら力が元に戻るのだろうかと一人で考える。
何も出来ない自身に呆れて溜息をついていると、グリムがプルプルと身体を震わせているのに気付いた
あなた
あなた
どうした
グリム
グリム
鼻が……ムズムズするんだゾ。
ぐぬぅ……ふぁ……ふぁっぐしょい!!鼻がかゆいんだゾ〜
グリムが連続でくしゃみをしていると、隣に飛んできたエースが「せめて片手でおさえろよ」と注意する。
グリム
グリム
手を離したらオレ様がおっこっちまうんだゾ
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
見てて危なっかしいから一旦降りたらどー?
グリム
グリム
そうするんだゾ
エースに言われ、グリムは不安定な状態で下に箒を移動させる。その際に今度は盛大なくしゃみをして「は〜。スッキリしたんだゾ」と笑顔を浮かべる。
しかし、気が緩んだグリムの魔力のブレによって重さがある私の方から箒ごと落下する。
あなた
あなた
っ……!
あなた
あなた
(グリムが着地しようと下におりていたおかげで地面との距離は幸いにも二階建て程の高さしか無い。“私なら”体勢を立て直せば着地出来る)
落下する間に助かる方法を頭の中で巡らせ、咄嗟に体勢を立て直そうとするが、それよりも先に、下で飛んでいた誰かに受け止められた。
ジャック・ハウル
ジャック・ハウル
おい!大丈夫か?
あなた
あなた
……あぁ、すまない。助かった
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
わいは!どんだば!
※訳:わっ!びっくりした!
グリム
グリム
た、助かったんだゾ、エペル
私とグリムはジャックとエペルに抱えられ、上で飛んでいたエースが慌てて低飛行中のジャックの傍にやって来る。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
いきなり落ちるから心臓止まるかと思ったわ!
デュース・スペード
デュース・スペード
あなた、グリム平気か!?
地上で待機していたデュースが声を掛け、エペルが「二人とも無事だよ」と返事する。
助かったはいいが、何時まで抱えられていればいいのだろう。ジャックは両手を離していても落ちないのだろうかと少し心配してしまう。
あなた
あなた
(にしても、低飛行とは言え、上から落ちてきた私を上空で箒に跨ったまま両手で受け止めるとは……大したものだな。バランスも崩していないし)
自分の状況を忘れてジャックをジッと見つめ分析していると、視線が合う。ジャックは気まずそうに「わ、悪い。地面におろしてやるからあとちょっと我慢しててくれ」と言いながら箒に私を座らせ、地面に着地した。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
ったく、気を付けろよなグリム
デュース・スペード
デュース・スペード
下手したら命にも関わる。僕達はまだ上手に飛べる訳でも無いから尚更気を付けないと
グリム
グリム
ぐぅ……分かってるんだゾ
ジャック・ハウル
ジャック・ハウル
上から落ちてきた時は驚いたぜ
あなた
あなた
よく受け止めようと思ったな。
おかげで助かったが……
ジャック・ハウル
ジャック・ハウル
あ?当たり前だろ。受け止めなかったらそのまま落ちて大怪我か、もしくは死んでたかもしれないんだぞ
勿論私も分かっている。しかし、通常こういう場合は普通の人間ならば反射的に避けるものでは無いのだろうか。
なんなら、受け止めきれずに巻き添えになる可能性だってあったのだ。
今回のジャックの行動は、受け止められる自信と確信があったのか、咄嗟に動いたのか、はたまた両方かどうかは知らないが、礼を言わねばなるまい。
あなた
あなた
助けてくれたこと礼を言う。有難う。
それと、エペルも
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
え!?ぼ、僕はたまたまというか……相手はグリムクン、だったし
グリム
グリム
サンキューなんだゾ!エペル
グリムの礼に「軽いな……」とデュースが呆れ気味に言い、グリムと私はバルガス先生に呼び出され、注意を受けた。注意だけで済まされて良かったが。
因みに、魔法が使えない私とモンスターのグリムは二人で一人として授業に挑むようにとクルーウェル先生に言われており、そのせいで私もバルガス先生に呼び出されたのだ。
あなた
あなた
(仮に私が落ちたとして、怪我はしても死ななかったんだがな)
もしも、私が死なない人間と知ったら彼等はどう思うだろうか。気味悪がられるのか、他人事だから気にしないのか、受け入れてくれるのか……。死なないのに人間と言って良いのかさえ怪しいが、私も気をつけなければ。

プリ小説オーディオドラマ