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第30話

二十九話 式神
1,317
2022/07/17 16:29
オンボロ寮の前まで来ると、あることに気付き、ドアノブに伸ばす手を止めた。
あなた
あなた
(そう言えば……グリム、どこ行った)
私がゴミ出しに行く前、グリムには一人で大丈夫だからとモストロ・ラウンジに残ってもらっていた。けれど、それ以降姿を見ていない。
あなた
あなた
(アズール達も指摘していなかったし、すっかり忘れていた)
グリムが何処にいるのか考えていると、ドアが開く。私の気配を察知したのか、中から鶴丸が出てきた。
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
何してるんだ?
入らないのか?
あなた
あなた
グリムが先に帰ってないか?
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
グリ坊なら、帰ってきてないぜ。
何かあったか?
あなた
あなた
グリムを学校に置いてきたかもしれない
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
きみが?珍しいな。グリ坊のことだからその内戻ってきそうだが……どうする?寮で様子を見るか?学校に式神でも送るか?
あなた
あなた
式神で行こう。最近、術も使っていなかったし……腕が鈍るといかんからな
何かあった時の為に内側の胸ポケットに入れて置いた形代を取り出し、術を使うと文字が浮かび上がる。最後に息を吹きかけると、形代が折り紙のように鳥の形になり、学校の方へ消えた。
式神の形は自在に変えられる。だが今は見つかりにくい方が良いだろう。
魔の力は今は無いが、霊力だけは残っていて助かった。
あなた
あなた
さて……グリムが見つかるまでの間、まかないを貰ったから冷やしておかないとな
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
まかない貰ったのか。良かったな。
あ、そうだ。……おかえり
あなた
あなた
あぁ。ただいま。
あと、お前の服を先輩から貰ってきた。
下着は流石に言えなかったが……
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
お、おう……。そこは自分で何とかする
あなた
あなた
グリムには悪いが、先に食事を済ませるか
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
分かった
手洗い等を済ませた後、夕餉の準備をする。まかないで料理が増えたのもあり、昨日よりかは腹が満たされそうだ。
あなた
あなた
昼間は何してたんだ?
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
あー……暇つぶしに適当に散歩に出てた。閉じこもってるのも退屈だしな
あなた
あなた
あまり人前に姿を晒すなよ。
後が面倒だ
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
分かってるさ
他愛もない話をしながら食事を済ますと、コンコンとドアをノックする音が聞こえ、席から立ち上がって玄関の方へ向かった。
扉を開けながら「どちら様で……」と言いかけると、その言葉を遮るように聞きなれた言葉が耳に入った。
今剣(極)
今剣(極)
あるじさま!
あなた
あなた
今剣……?
一文字則宗
一文字則宗
僕達も居るぞ
山姥切長義
山姥切長義
鶴丸国永の気配もするが、まさか一緒か?
くろのすけ
くろのすけ
何はともあれ、会えて良かったです!
審神者様
あなた
あなた
一文字則宗に、山姥切長義、くろのすけまで
グリム
グリム
オレ様もいるんだゾ。
この“紙”?みたいなのコイツ等が見つけてな
あなた
あなた
グリム……何故お前が今剣達と一緒に?
それに、それは私が先程学校側に送った式神だな
鶴丸国永(極)
鶴丸国永(極)
おいおい、何の騒ぎかと思って来てみたら、驚いたな。こんな一気にどうして……
山姥切長義
山姥切長義
事情は話す。取り敢えず、中に入っても良いか?
あなた
あなた
勿論だ
突然過ぎる客人に驚きながらも、私は彼等をオンボロ寮の中へと入れた。

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