第13話

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2021/06/17 11:28


「」





その痛々しい表情に、覚悟を決める。
ゆっくりと手を離すと、祥も優しく笑って私の頭に載せた手を放す。

これで、お別れか。

その事実は数年たっているというのにまだ受け止められない。
何て頭の悪い後悔何だろうか。ほとほと実感する。


「杏。…俺、何年だって待ってるから。」

「えぇ、それ早く死ねってこと?」

「何でそうなるんだよ、ちげーよ。…何年もずっと生きて、よぼよぼのばーちゃんになってから死ねよ? 俺とのお約束だ。」

「はは、もう約束破ってる人には約束なんて言われたくないなぁ? …ま、守るし死ぬ気もないけどね。」

「そりゃあよかった。」

電車から一歩、身を引く。
祥は寂し気に眉を八の字にすると、私と同じように電車の奥に身を引いた。

忘れられない、忘れてはいけない、あの日の思い出。
それらが走馬灯のように駆け巡る。

…あれ、私は死ぬ間際じゃないのになぁ。

ほんとうに、ばかみたいに未練たらたら。これじゃ、本当にどっちが死ぬのか分かんないじゃんか。



一瞬、頭を過る。

ここで降りるふりをして、ドアが閉じる間際に電車内に飛び込んでみれば?



…そんなこと、出来るわけがない。





「祥、」

「? どうかしたか?」




「すきだよ。」


「…っは、俺もだよ。ばーか。」








その4文字は、君の生前にはなかなか言い難くてしょうがなかった言葉。
分かれ間際くらいなら、言ってやろうじゃないか。








ドアが、眼前で閉まる。













2月の駅は君を飲み込んだ。








涙も過去も、全部ないまぜ。

でも、それでよかった。


これで、よかった。












初めて、君に抱いた感情があった。


初めて、君に行った4文字があった。


初めて、君へ向けられた運命を呪った。




それでも、私は君が。





さよなら、祥。


おやすみ、いってらっしゃい。



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