──放課後。
なんだかどっと疲れた私は、
なぜか銀と紅狼に挟まれながら、
教会に帰る。
今日は入学式だけなので、
午前中だけで学校は終わりだ。
いがみ合うふたりを横目に、
私はため息をつく。
(銀なんてさっき銃を出しかけてたし、
こんな調子で学校生活は大丈夫なの
かな……)
先行きが心配になっていると、
教会に続く森の道でふたりが足を止めた。
一気に張り詰めた空気に、
私はごくりと息を呑む。
(殺気だなんて……怖いっ)
胸の前で、汗が滲む両手を握りしめる。
すると森の茂みの中から、
数頭のオオカミが現れた。
銀は射貫くような視線を紅狼に向ける。
それには答えずに、
紅狼はオオカミたちを見回した。
紅狼の視線が私に向けられ、
どきっとする。
銀は吐き捨てるように言って、
銃を構えた。
そう紅狼が言うも、オオカミたちは、
引き下がる気配を見せない。
オオカミたちはそう言って、
いっせいに襲いかかってきた。
ぼそっとそう呟いた紅狼の頭には、
大きなオオカミの耳が現れる。
申し訳なさそうな顔をする紅狼から、
目をそらせないでいると──。
銀の怒号が鼓膜を破るような勢いで、
飛んでくる。
(たしかに、私がいたら足手まとい
になる。だったら……)
私を安心させるためか、
ふっと笑って銀はオオカミに対峙する。
銀に背を向けた私は、教会に向かって駆け出した。
そんな紅狼の声が背中に届いたが、
私は銀の言葉を信じて走った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。