不安そうな顔をする紅狼。
(出会ったばかりのときも、
同じことを聞いてきたな。
強いのに、こういうところは迷子の子供みたい)
私は笑みを向けると、その首に腕を回す。
私たちは微笑み合って、
そっと唇を重ねる。
(どんな紅狼も受け入れるって、
言ったのに……)
乱暴にしないよう力加減をしてくれ
ているのがわかって、私はいっそう
紅狼を好きになるのだった。
***
コテージに移り住んで、数日。
怪我も治ってきた私は、
ずっと胸にあった気がかりを口にする。
(難しいかもしれない。
銀はお母さんを殺した人外を恨んでるから)
すぐに『大丈夫』と答えられないでいると、
急に紅狼の耳がピンッと立った。
(人間って、まさか……)
その手を強く握れば、紅狼は苦笑いする。
緊張の面持ちで、
私たちはコテージの外に出る。
そこにいたのは──。
幼なじみでハンターの銀が、
数人のハンターたちとともに立っていた。
銀は悲痛な表情で、私を見る。
銀は射貫くような視線と、
銃口を紅狼に向けた。
自分でも驚くくらい、大きな声が出た。
銀は紅狼と私の顔を見比べる。
信じられないといった様子で、
銀は私の答えを待っている。
(ごめんね、銀。
銀が人外を憎んでるのは知ってるけど、
この気持ちを偽ることはできないから……)
(よかった。わかってくれた)
私がほっと息をついたとき──。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。