銀は迷いなく引き金を引き、
銃声が朝の教会に響き渡る。
それを軽々と避けた紅狼は大きく飛翔し、
そのまま銀に鋭い爪を振り下ろした。
──キーンッ。
銃と爪がぶつかり合う音がする。
(紅狼、銀……。
止めたいけど、見守るべきなんだよね)
私は止めに入りたい気持ちをグッと堪えて、
拳で語り合うと決めた紅狼を信じることにした。
(愛してる……)
その言葉が心に染み渡り、目の奥が熱くなる。
嗚咽とともに名前を呼ぶと、
銀が一瞬、私に視線を寄越した。
紅狼はその一瞬の隙を見逃さなかった。
私に意識を向けた銀との距離を縮め、
紅狼は鋭い爪を突きつける。
喉元に突きつけられた爪を見て、
諦めたように銀はそう言った。
それを聞いた銀の身体から、
ふっと力が抜けるのがわかる。
銀は自嘲的に笑うと、私を見る。
(あのとき、銀の手も震えていて、
怖いのに私を守ろうとしてくれたこと、
今でも鮮明に覚えてる)
げんなりしている紅狼から離れた銀は、
私のところに歩いてくると……。
いつものクールな銀らしからぬ発言。
それに絶句していると、
銀は私の髪を一房すくい、口づけた。
(どうしちゃったの、銀!?)
あまりのキャラの変わりように、
私が固まっていると──。
後ろから腰を抱き寄せられる。
振り向けば、紅狼が威嚇するように、
耳を立てて銀を見据えていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。