第19話

対決
3,994
2020/04/06 04:00
神上 銀
神上 銀
突然現れた、それも人外に、
まりあを奪われてたまるか
銀は迷いなく引き金を引き、
銃声が朝の教会に響き渡る。

それを軽々と避けた紅狼は大きく飛翔し、
そのまま銀に鋭い爪を振り下ろした。

──キーンッ。

銃と爪がぶつかり合う音がする。
一夜紅狼
一夜紅狼
俺は人外、人間うんぬんは
どうでもいい。ただ、ひとりの
男として、まりあを守るだけだ
(紅狼、銀……。
止めたいけど、見守るべきなんだよね)

私は止めに入りたい気持ちをグッと堪えて、
拳で語り合うと決めた紅狼を信じることにした。
神上 銀
神上 銀
人外と人間が本気で
結ばれると思ってるのか?
一夜紅狼
一夜紅狼
種族の違いを超えて、俺は
まりあを愛しているからな
(愛してる……)

その言葉が心に染み渡り、目の奥が熱くなる。
一夜紅狼
一夜紅狼
本気でなきゃ、
単身でハンターのいるここに
足を運びはしない
宮野 まりあ
宮野 まりあ
……っ、紅狼……
嗚咽とともに名前を呼ぶと、
銀が一瞬、私に視線を寄越した。
神上 銀
神上 銀
まりあ……
一夜紅狼
一夜紅狼
もらった
紅狼はその一瞬の隙を見逃さなかった。

私に意識を向けた銀との距離を縮め、
紅狼は鋭い爪を突きつける。
神上 銀
神上 銀
ぐっ……殺せ
喉元に突きつけられた爪を見て、
諦めたように銀はそう言った。
一夜紅狼
一夜紅狼
俺はまりあの愛する者も守る。
だから、お前のことも殺さない
それを聞いた銀の身体から、
ふっと力が抜けるのがわかる。
神上 銀
神上 銀
……お前が本当に
ただの化け物なら、
迷いなく狩れたのにな
銀は自嘲的に笑うと、私を見る。
神上 銀
神上 銀
まりあ、人外との恋愛なんて、
つらいだけだぞ
宮野 まりあ
宮野 まりあ
それでも、私は紅狼と生きて
いくって決めたの
神上 銀
神上 銀
……そうか。弱いくせに、
昔から一度決めたことは頑として
譲らないよな、まりあは
宮野 まりあ
宮野 まりあ
その強さをくれたのは、
銀だよ
神上 銀
神上 銀
俺?
宮野 まりあ
宮野 まりあ
人外にお母さんを殺されたとき、
自分も怖かったはずなのに、
私の手を引いて逃げてくれた
(あのとき、銀の手も震えていて、
怖いのに私を守ろうとしてくれたこと、
今でも鮮明に覚えてる)
宮野 まりあ
宮野 まりあ
人外に大切な人を奪われても、
ハンターになって人外と戦う道を
選んだ銀みたいに、強くなりたい
なって、そうずっと思ってた
神上 銀
神上 銀
……そういうこと言うから、
諦めきれなくなるんだろ。
お前のこと
宮野 まりあ
宮野 まりあ
あ……ご、ごめんなさい
神上 銀
神上 銀
謝る必要はない。そもそも、
諦めるつもりはないからな
一夜紅狼
一夜紅狼
それは聞き捨てならない。
まりあは俺の女だ
神上 銀
神上 銀
そうやって高をくくってると、
痛い目見るぞ。俺の親父は俺より、
まりあ溺愛主義だからな
一夜紅狼
一夜紅狼
神父だったな。骨が折れそうだ
げんなりしている紅狼から離れた銀は、
私のところに歩いてくると……。
神上 銀
神上 銀
卒業までに、まずは幼なじみを
脱する。そこのオオカミから
奪い返すつもりだから、覚悟しとけ
いつものクールな銀らしからぬ発言。

それに絶句していると、
銀は私の髪を一房すくい、口づけた。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
なっ
(どうしちゃったの、銀!?)

あまりのキャラの変わりように、
私が固まっていると──。
一夜紅狼
一夜紅狼
俺の女だ。気安く触れれば、
喉元嚙み切るぞ
後ろから腰を抱き寄せられる。

振り向けば、紅狼が威嚇するように、
耳を立てて銀を見据えていた。

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