第4話

波乱の入学式
11,270
2019/12/26 04:09
私を咎めるように見る銀に、
息を呑む。
神上 銀
神上 銀
普通の人間は、
関わるべきじゃない
(銀は人外に、お母さんを殺されてる。
だから、気持ちはわからなくはないけど……)
一夜紅狼
一夜紅狼
それを決めるのは、
お前じゃない。まりあだろ
神上 銀
神上 銀
部外者が口出しするな
銃口を向けられているのに、
紅狼は平然と銀に背を向ける。
一夜紅狼
一夜紅狼
俺からすれば、
お前のほうが部外者だがな
神上 銀
神上 銀
……なんだと?
一夜紅狼
一夜紅狼
まりあ、また会える。
そのとき、さっきの答えを
聞かせてくれ
それだけを言い残して、
紅狼は屋根の向こう側へ飛び降りると、
その姿を消してしまった。

(さっきの、答え……)

私は紅狼の告白のことを思い出しながら、
しばらくその場から動けなかった。

***

──翌日。

高校の入学式が終わったあと、
銀と同じクラスになった私は、
教室にやってきた。
神上 銀
神上 銀
俺は窓際のいちばん後ろの
席みたいだ
宮野 まりあ
宮野 まりあ
ハンターの仕事で夜遅くなっても、
寝られるね
私は銀と別れて、
廊下側のいちばん後ろの席に座る。

そうやって、カバンの中を整理して
いると──。

ガタンッと隣に誰かが腰かけた。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
あ、初めまし……
一夜 紅狼
一夜 紅狼
昨日ぶりだな、まりあ
宮野 まりあ
宮野 まりあ
……えっ、どうしてここに、
紅狼が!?
一夜 紅狼
一夜 紅狼
言っただろ。また会えるってな
(またって、確かに言ったけど……)

まさか、昨日の今日だと思っていなかった
私は目を丸くする。

それから紅狼に顔を近づけて、
小声で尋ねる。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
オオカミ男も、人間の学校に
通ったりするの?
その問いに紅狼は目を見張ると、
すぐにくっと喉の奥で笑う。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
真剣に聞いたのに……。
正体がバレたら、大変でしょ?
一夜 紅狼
一夜 紅狼
……? まりあは、
俺を心配してくれてるのか?
宮野 まりあ
宮野 まりあ
あ……
(人外には関わっちゃちゃいけない
って、銀に言われたのに……)

それでも、紅狼のことが気に
かかってしまうのは……。

(紅狼が命の恩人だから……?)
一夜 紅狼
一夜 紅狼
困った顔も可愛いらしいな。
もっと、よく見せてくれ
宮野 まりあ
宮野 まりあ
く、紅狼……っ
紅狼の長い指が私の顎にかかると、
周囲から甲高い悲鳴があがった。

(く、紅狼……近いよ! 
それに、みんなに見られてて
恥ずかしい)

間近にある紅狼の顔に
どきまぎしていると、首に誰かの腕が回る。
???
???
まりあに近づくな。
そう警告しただろうが
後ろに引き寄せられるのと同時に、
紅狼の手が離れた。

顔を上げると、背後には
紅狼を睨みつけている銀が立っている。
一夜 紅狼
一夜 紅狼
言っただろ、それを決めるのは、
まりあだと
バチバチとふたりが睨み合っている中、
周囲からは……。
クラスの女子1
クラスの女子1
あれ、あの子を取り合ってる
のかな?
クラスの女子2
クラスの女子2
少女漫画みたいな展開だね。
本当にあるんだ、こういうの
ひそひそ声が耳に入ってきて、
恥ずかしさがピークに達した私は……。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
もう! ふたりとも、
いい加減にしなさいっ
ふたりを叱りつけると、
みんなの前でお触り禁止令を出す羽目になった。

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