私を咎めるように見る銀に、
息を呑む。
(銀は人外に、お母さんを殺されてる。
だから、気持ちはわからなくはないけど……)
銃口を向けられているのに、
紅狼は平然と銀に背を向ける。
それだけを言い残して、
紅狼は屋根の向こう側へ飛び降りると、
その姿を消してしまった。
(さっきの、答え……)
私は紅狼の告白のことを思い出しながら、
しばらくその場から動けなかった。
***
──翌日。
高校の入学式が終わったあと、
銀と同じクラスになった私は、
教室にやってきた。
私は銀と別れて、
廊下側のいちばん後ろの席に座る。
そうやって、カバンの中を整理して
いると──。
ガタンッと隣に誰かが腰かけた。
(またって、確かに言ったけど……)
まさか、昨日の今日だと思っていなかった
私は目を丸くする。
それから紅狼に顔を近づけて、
小声で尋ねる。
その問いに紅狼は目を見張ると、
すぐにくっと喉の奥で笑う。
(人外には関わっちゃちゃいけない
って、銀に言われたのに……)
それでも、紅狼のことが気に
かかってしまうのは……。
(紅狼が命の恩人だから……?)
紅狼の長い指が私の顎にかかると、
周囲から甲高い悲鳴があがった。
(く、紅狼……近いよ!
それに、みんなに見られてて
恥ずかしい)
間近にある紅狼の顔に
どきまぎしていると、首に誰かの腕が回る。
後ろに引き寄せられるのと同時に、
紅狼の手が離れた。
顔を上げると、背後には
紅狼を睨みつけている銀が立っている。
バチバチとふたりが睨み合っている中、
周囲からは……。
ひそひそ声が耳に入ってきて、
恥ずかしさがピークに達した私は……。
ふたりを叱りつけると、
みんなの前でお触り禁止令を出す羽目になった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。