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第2話

オオカミ男
宮野 まりあ
宮野 まりあ
一夜……紅狼さん
不審な男
不審な男
お前、何者だ
一夜 紅狼
一夜 紅狼
…………
不審な男
不審な男
普通の人間に、
この俺が止められるわけがない
私に襲いかかった男は、
人間離れした鋭い爪を隠しもせずに
一夜さんを見ている。

(あの人、人間じゃない……!)

よく見ると、猫のように尖った耳と
尻尾がついている。

(あの爪、あの耳と尻尾は……人外!)
一夜 紅狼
一夜 紅狼
俺の素性は関係ない。
この女に手を出したことが
問題だ
不審な男
不審な男
その女は今夜の獲物だ。
邪魔をするな
一夜 紅狼
一夜 紅狼
力の差がわからないのか
そう言い放った一夜さんのまとう空気が
ピリピリとしたものに変わった。
一夜 紅狼
一夜 紅狼
忠告はしたぞ
一夜さんはそう言って、
勢いよく一歩を踏み出す。

その瞬間、一夜さんのフードが外れた。

(え……)
一夜紅狼
一夜紅狼
この女は俺のだ。
手を出せば……
一夜さんの金色の瞳が、
ギラリと光る。

その頭には大きな耳、口には尖った牙が見えた。
一夜紅狼
一夜紅狼
その喉元、オオカミ一族の
次期頭領である俺が噛み切ってやる
(一夜さんも、人外!? 
しかも、オオカミ男だったなんて……)

人外を知ることになった
〝ある出来事〟。

子供の頃の話だ。

銀のお母さんに連れられて、
私と銀が遊園地に行ったときのこと。

そこで吸血鬼に襲われて、
人外という存在を知った。

銀のお母さんは私たちを逃がすために、
自ら吸血鬼の餌になった。

(あの日から、銀は人外を恨んでる。
だから、お父さんと同じ、
ハンターの道に進んだんだから)
不審な男
不審な男
オオカミ一族の次期頭領、だと……?
男は一夜さんを怯えるような目で
見ながら、後ずさる。
一夜紅狼
一夜紅狼
死にたくなければ、
さっさと消えろ
威嚇するように爪を構える一夜さん
に、男は一目散に逃げ出した。

その場に静けさが戻ると、
一夜さんが私を振り返った。
一夜紅狼
一夜紅狼
ずっと、お前に会いたかった
宮野 まりあ
宮野 まりあ
どう……して、私に?
久しぶりに目にした人外に、
足がすくみそうになる。

(私、殺されちゃうのかな……。
どうしよう、銀……っ)

祈るような気持ちで、
胸の前で両手を握りしめた。

それを目にした一夜さんは、
悲しそうに眉根を寄せる。
一夜紅狼
一夜紅狼
……俺が怖いか
宮野 まりあ
宮野 まりあ
それは……
(本当は怖い。
だけど、一夜さんはあの人外から、
私を助けてくれたんだよね……?)
一夜紅狼
一夜紅狼
当然、だな。
怖がらせて悪かった
私が言いよどんでしまったせいか、
一夜さんは背を向けた。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
ごめんなさい!
その寂しげな背中を見た私は、
思わず呼び止める。
一夜紅狼
一夜紅狼
…………
一夜さんは切なげな表情で、
私を振り返った。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
子供の頃、吸血鬼に襲われた
ことがあって……。
その、トラウマになってるんです
一夜紅狼
一夜紅狼
なら、これ以上は
話さないほうがいい。
俺は、お前を怖がらせたくはない
それに、私は首をぶんぶんと横に振る。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
一夜さんは、
私を助けてくれました。
だから……
しっかり一夜さんの目を見つめて、告げる。
宮野 まりあ
宮野 まりあ
怖いけど、怖くない……です。
って、矛盾してますよねっ
(私、励ましたいのに
傷つけてる気がする!)

どうしよう、と頭を抱えていると
一夜さんがふっと笑みをこぼした。
一夜紅狼
一夜紅狼
紅狼、でいい
宮野 まりあ
宮野 まりあ
え?
(急に、なんの話を……)
一夜紅狼
一夜紅狼
苗字では、よそよそしいからな。
頼む、そう呼んでくれ
名前で呼んでほしいと頼んできた
一夜さんの笑みは……。

私の中の人外の印象を180度
変えるほど──。

恐ろしさなど微塵も感じさせない、
優しい笑顔だった。