私はその日から先生に頼んで日記をつけることにした
日記については初気が教えてくれた
私が初気に教えられながら右手で文字という物を書こうとするとぐちゃぐちゃになって黒く染まっていく
何度も練習してやっとかけた一文は初気に出会った時のことだった
「私はある日ある一等星を見つけました。
とても綺麗で輝いてるその一等星は、私の手を引いていきました。」
この一文だった
私はこの一文が書きたくて今までずっと練習してきたのだ
私は初気と久しぶりに歌を作った
ある時は初気と一緒に考えて
ある時は1人で考えて
そうして私の手からこぼれ落ちるほどの歌が出来た
その中でも初気のお気に入りは「声」という歌だった
この歌の歌詞には私が初めて書いた文が歌詞の一部になっている
初気は自分の為に頑張った私の一文がとても好きなように見えた
いまでも私は日記を書き続けている
初気が寝ている間にもうそんなに長くない自分の人生を少しでも書き留めておきたかったのだ
トンとノートを突きペンをしまう
ノートの始めの方を見ると私が一緒懸命頑張ったであろうぐちゃぐちゃに書かれた文字があった
これを見てから寝るのが最近の日課である
私がこうやって誰かと笑って過ごせるなんて思っても見なかった
初気がいてくれたから
初気が私を支えてくれたから
私は初気の寝息のような機械音を確認して横になる
周りが騒がしくて起きる
体が大きく揺れる
目の前が霞んで見える
チラリと横を見ると先生が急いで私を運んでいる
その時ふと呟く
先生は急いでいてもその言葉を聞き逃さなかった
先生が走っているからか吐息混じりで言う
感覚の薄い手を初気が握ってくれる
なぜか暖かかった
先生が右へ曲がると小部屋があった
先生はそこに入るなり私をベッドへ乗せて薄い機械をまたカチカチと打っている
初気は鏡という物を恐れる
先生はその辺にあったナイフのような物でを思いっきり鏡という物に刺した
絞り出した声で初気に問う
すると初気は私の手を握りながら
そう言うと初気は所々が色々な色に変わり消えてしまった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!