私は物心ついた時から病院にずっといた
暗くて静かで
私にとって大好きな場所だった
朝は元気を装いニコニコと笑って生きる
夜は周りの目等気にせずほぼ何もない状態で生きる
そんなことが日常だった
いつものように先生と言う人が私に話かけてくる
いつものように装うだけ
私は口角ににっこりと上げた
そうか、と先生が呟く
いつもならこのまま先生は部屋を出ていく
でも今日は違った
そう言うと先生は少し大きなカバンのような物を取り出した
先生がそのカバンのような物についたつまみを押すと何か流れ始めた
何かわからないが何故か楽しい
先生が驚いた様子でこちらを見る
私の目と頬は濡れていた
初めて私が興味を持ったソレについて私は濡れている原因より知りたかった
音楽というその音はとても心地良かった
父親という単語に私はハテナの記号しか頭に浮かばなかった
母親ならわかるが父親とか一体なんなんだろうか
家族という単語にも私は首を傾げた
仲間…
私は先生に初めておねがいをした
先生は少しびっくりしたように見えたがすぐにふんわりの笑った
そういうと先生はまたつまみを押した
懐かしいような心地良い音が流れる
私はこの音を聞いてふと思う
これを自分で作れないか
と
先生は目を丸くした
私がここまで強請るのは初めてだった為先生はとてつもなく驚いていた
会話の間に少し間ができた
私は何故か溢れてくる感情に胸がはちきれそうだった
ただし…?
先生が部屋から出ようとする
こんなに声をあげようと必死になったのは産声をあげた時以来だろうか
先生はまたやさしく微笑んで部屋を出て行った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。