【粛清said】
だだっ広い白い空間、中央には太く長い鎖に両手足を繋がれ張り付け状態のグルッペン。
俺を見るその不気味な赤い瞳には期待なのか、歓迎しているかのようにも見える笑みが浮かんでいる。
遂に、ここ、クソのような研究所から抜け出す、実行日なのだ。
俺たちは暴走を起こした犯罪者としてここに送られた。ただ、無能が有能に刃向かう為の施設。
こんな、踊らされているような場所でのうのうと生きる気は無いとここにいる13名の有能が
結託し反逆を起こそうと計画してきた。先ずは一段階目。
俺は黙ってグルッペンに歩み寄る。自分の足には靴も無く、素足でヒタヒタと冷たい音が聴こえる。
最初に口を開いたのはグルッペンだった。
と軽い返事をし、顔の前で、親指と中指を添える。
俺の能力:粛清、乱れや不正な者を除く。それは、物、人、自然にも対応する。
簡単に言うと有罪か無罪か、能力が決めてくれる。有罪であればそれ相応の罰で、罰せらせる。
発動方法は至って簡単。指を鳴らすだけ、もしも、グルッペンの拘束具がこの世にとって、
間違い、又はグルッペンは世に必要な人物だとしたら、破壊出来る。だが、そうでなかったら、
見捨てて、他の仲間達とここ出るというのが第一段階だ。そして今、この人が、善か否か、俺が証明する。
パチン‼︎
いつもより精を入れて打ったので歯切れの良い甲高い音が響いた。
そして響いたと同時に、グルッペンの拘束具が「パン!」っと弾ける様に外れ、解放された。
拘束具が外れたのは許容範囲だ、だがグルッペンの能力は破壊。
手の平から指先まで、触れた物は何でも壊す。一工夫すれば、いつでも拘束具を壊せたはずなのに、
こいつは壊さなかった。いつでも逃げ出せたはずなのに………何を求めてるんや?
グルッペンが世に必要だとしても、まだこの男は信用できひん。
俺の内の思いも知らず、お礼を済ませたグルッペンは仲間の一人であるロボロに念を送った。
ロボロの能力はテレパシー。自分達からは念を送るだけで対話は出来ない。
だが、ロボロはみんなに何かあった時に、という事で、仲間、建物、研究員
身の周りの物と細い糸のようなモノで繋がっているらしく、 念を送ると近状報告などをしてくれる。
ロボロから、返事が俺にも返ってきた。
確かに遠くの方で、爆発音や建物の崩れる音が聞こえてきた。
俺の能力はあまり戦闘向きではないので退こうかと思ったが、何故だか微かに聞こえてくる音が
楽しそうに感じてしまい自分もやったろうと思った瞬間、
とてつもない轟音と共に目の前が真っ暗になった。
ーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!